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ジェンダーギャップ指数は北欧イデオロギー押し付けの道具

日本が女にとって地獄のような国であることの根拠とされるジェンダーギャップ指数(Global Gender Gap Index)の2021年版が公表されたので検証する。

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結論を先に書くと、GGGIは「ギャップ=差別」と誤解させるミスリード狙いの恣意的に作られた指数であり、ランクアップを目標にする合理性は全くなく、むしろ百害あって一利なしである。GGGIを公表している世界経済フォーラムは、ダボス会議で知られるグローバルパワーエリート集団であることを念頭に置く必要がある。

ジェンダーギャップ指数(Global Gender Gap Index)は

経済(Economic Participation and Opportunity)
教育(Educational Attainment)
健康(Health and Survival)
政治(Political Empowerment)

の4つのサブ指数(0~1)の平均値で、

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このようなコンセプトに基づいている。

Three Underlying Concepts
There are three basic concepts underlying the Global Gender Gap Index, forming the basis of how indicators were chosen, how the data is treated and how the scale can be used. First, the index focuses on measuring gaps rather than levels. Second, it captures gaps in outcome variables rather than gaps in input variables. Third, it ranks countries according to gender equality rather than women’s empowerment.

水準ではなく男女差を示すものなので、女9・男10の国よりも、女1・男1の国が上になる。つまり、ランク上位国が「女が解放された天国」というわけではない(👉参考)。女>男の場合は「ギャップが無い→男女平等→スコア1」になることにも注意。

Input(機会)ではなくOutcome(結果)の男女差を示したものであることが重要である。機会は平等だが男女の選好(の分布)が異なるために生じるギャップと、機会の不平等から生じるギャップを区別していないので、ギャップは必ずしも性差別を意味しない。

156か国を並べると以下の通り。日本120位(赤)、フィリピン17位(橙)、南アフリカ18位(緑)である。

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健康と教育では一部を除くとほとんど差は生じない。

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一方、経済と政治はばらつきが大きく、日本は下位になっている。

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健康・教育と政治・経済の平均は以下の通り。

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政治・経済では日本は132位で、「女性にとって世界最悪の場所」と呼ばれたコンゴ民主共和国(131位)より下になる。

日本は政治が147位でサウジアラビアやシリアよりも下である。

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政治のサブ指数の構成項目とウェイトは

第一院の議員:0.310
国務大臣:0.247
過去50年間の首相・大統領在任期間:0.443

Political Empowerment
This subindex measures the gap between men and women at the highest level of political decision-making through the ratio of women to men in ministerial positions and the ratio of women to men in parliamentary positions. In addition, we’ve included the ratio of women to men in terms of years in executive office (prime minister or president) for the last 50 years.

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日本では政治参加は男女公平なので、政治家の少なさは機会の不平等ではなく、国政を目指す意欲の男女差によるものと考えられる。一般的に、女は男よりも肉体的・精神的に負荷が大きい仕事を避ける傾向があるが、国会議員はその最たるものなので、女が少なくなるのが自然である。漁師や土方、外科医・整形外科医の女が少ないことと同じである。

フェミニズムの基本的目標のひとつは、公平さである。つまり、男性でも女性でも同じ適性とモチベーションがあれば、与えられる成功のチャンスは平等であるべきだということだ。このことについてはまったく疑う余地はない。だがそれは、現実に男性と女性とが平均して同じモチベーションをもっているということにはならない。したがって、社会のあらゆる分野で男女が等しく活躍するというのは、必ずしも期待すべきではないのである。

GGGIが恣意的であることを最もよく示しているのが、政治のサブ指数でウェイトが最大の「過去50年間の首相・大統領在任期間」である。

Countries where women are found in the head-of state position more frequently than the norm include Finland (13 years out of 50), New Zealand (14 years), the United Kingdom (14.6 years), India (15.5 years), Germany (15.6 years), the Philippines (15.8 years), Norway (17.4 years), Ireland (20.8 years), Iceland (23.5 years) and Bangladesh, which is the only country where more women have held head-of-state positions (27 years) than men in the past 50 years.

日本よりも女が解放されていないはずのインドが7位、パキスタンが33位と高位なのは、有力な一族の女がいたためで、国全体の女の地位を反映していない。1位のバングラデシュはハシナ首相が17年間、ジア元首相が10年間の計27年だが、それぞれ初代大統領の娘と第7代大統領の元夫人である。

2位のアイスランドと3位のアイルランドにも別の問題がある。両国とも政治の実権は首相にあり、大統領は儀礼的・象徴的役割なので、アイスランドは7.5年、アイルランドは0年とするのが適当と思われるが、合算して23.5年と20.8年とされている。

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しかも奇妙なのは、首相+大統領の計100年を女と男で23.5年/76.5年、20.8年/79.2年に分けるのではなく、23.5年/26.5年、20.8年/29.2年としていることである。あまりにも恣意的と言わざるを得ない。

結論

上位が北欧4か国と「南半球の北欧」のNZであることは、この指数が北欧的価値観を基準にしていることを示している。つまりは北欧諸国が上位になるように作られた指数ということである。

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EUというゆるやかな共同体のなかに複数の国家が共存するヨーロッパは、いわば巨大な社会実験をやっているようなものだ。いまやもっとも過激(原理主義的)なリベラリズムは北のヨーロッパから生まれ、それがニューヨークやカリフォルニアのような「リベラルなアメリカ」に伝わり、カナダやオーストラリアなどの英語圏の移民国家(アングロスフィア)に広まって「グローバルスタンダード」をつくっていく。

しかし、北欧のイデオロギーが絶対的に正しいことが証明されていない以上、この指数のランクアップがよりよい社会の実現につながるとは限らない。「グローバルスタンダード」の押し付けにはむしろ懐疑的になるべきだろう。

北欧イデオロギー≒Anywheresの価値観の強要は、Somewheresの厚生を悪化させる。

Anti-domesticity family policy that has represented the interests of some professional women but has done nothing to stop the decline of the traditional family.

GGGIを作成する世界経済フォーラムはダボス会議を開催するGlobal Power Eliteの団体であることの意味をよく考えなければならない。世界経済フォーラムの「ジャパン・ミーティング2014」で安倍首相(当時)はこの👇ようにスピーチしていたが、ジェンダーギャップ指数のごり押しの裏には、ネオリベラリズムに基づいて世界を"Great Reset"する目的があるのではないかと強く疑われる。

「あたかもリセットボタンを押したように、日本を一変させる。」、130日程前、私はこう申し上げました。もうお分かりでしょう。明らかに日本は生まれ変わりつつあります。そして、これからも変わり続けます。

大半の日本人は認識をアップデートしていないと思われるが、北欧諸国はネオリベ先進国でもある。GGGIのベースにある北欧イデオロギーとは「富裕層にとっては天国の人権大国」を目指すものである。

世界の富裕層に関するクレディ・スイスの調査によると、スウェーデンの最富裕層1%が自国に占める富の割合は、米国のそれよりも大きい。
「経済的な貴族社会が復興しているようなものだ」と、スウェーデン労働組合連合のチーフエコノミスト、オラ・ペターソン氏は言う。
「スウェーデンは世界最高の国だ。富裕層にとってはね」と、社会民主労働党の元議員で現在は医療分野のビジネスマンに転向したヤン・エマヌエル・ヨハンソン氏はユーチューブ動画で皮肉に語っている。
Moene estimated that Norway has almost four times as many rich and almost twice as many super-rich per million inhabitants, compared to the United States.
He also warns that countries with a large upper class may experience that the rich and super-rich accumulate a lot of power, not least over economic policy.

参考

日本はフィリピンと南アフリカと比べると圧倒的に安全な国だが、殺人被害者の女/男比は大きいため、GGGIのコンセプトではジェンダーギャップが大きい国になる。

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付録

GGGIを利用したポジショントークには要注意。

この記事の筆者は「東京大学経済学部卒→日本生命→ニッセイ基礎研究所」のキャリアを活かしてgolden skirtになりたいのだろう。「○○協会」の理事、上場企業の社外取締役などの旨味のあるポジションを狙った"self-serving measures"ということである。

The quota has certainly benefited a small group of women who are already high achievers and are at the top of corporate hierarchies. They are called the “golden skirts” and their numbers are very limited.
Next time somebody pushes corporate quotas as a way to promote gender equity, remember that such policies (even if constitutional) are largely self-serving measures that make their sponsors feel good but do little to help average women.

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