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京都市東山区の合計出生率が低いのは大学生が多いから?

京都市東山区の合計出生率が全国最低なのは「産まない属性」の大学生の人口割合が大きいから、という説が多く唱えられている。

たとえば女子大の多い自治体に全国から女子学生が集まってくれば、その自治体の合計特殊出生率は下がる。その顕著な例が京都市東山区で、今回の調査でも同区は0.76と全国の市区町村で最低だった。東山区には短大や大学が集積しており、人口の1割近くが学生であることが影響している。

市町村単位で出生率をながめる場合には、大学などの施設の立地によってこの指標が影響を受けることがある点にも留意が必要となる。京都市東山区は合計特殊出生率が全国の市区町村の中で最低ということで知られるが、同区の人口構成をみると、18~23歳の年齢層の性比(男女比)に3対7と大幅な偏りがある。しかも、この年齢層の女性人口は同区の15~49歳女性人口の3割弱を占める。この偏りが同区の合計特殊出生率の数値に与える影響を十分に考慮しないと、出生率が全国最低ということばかりが強調されて、誤った認識が広まってしまうおそれがある。

京都市内中心部の出生率がワースト上位に並んだ理由について、市の担当者は「分析はこれから」としつつ、若い単身世帯が多いことを挙げる。京都市は大学や短大が集積し、人口の1割を学生が占める。合計特殊出生率は15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したものであるため、単身の若い女性が多い都市部は低く出るとする。

総務省統計局「国勢調査」
総務省統計局「国勢調査」
総務省統計局「国勢調査」より作成

しかし、合計出生率は各年齢の女の出生率(=出生数÷人口)を合計したものなので、各年齢のウェイトは等しく、年齢構成の偏りには影響されない。従って、この説は正しくない。

これに対して、この👇ような修正説が唱えられている。

だが、東山区と全国の有配偶率の差が大きいのは、大学生が多い20~24歳ではなく、それより上の年齢階層である(←20代前半は全国的に有配偶率が低いので大差がつかない)。

総務省統計局「国勢調査」より作成

合計出生率の差も、20~24歳ではなく主として25~29歳と30~34歳で生じている。

厚生労働省「人口動態統計特殊報告」

東山区の合計出生率が低いのは全年齢階層で未婚率が高いためで、20歳前後の大学生が多いこととは直接の関係はないと言える。ということで、修正説がズレていたことも判明した。

総務省統計局「国勢調査」より作成

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