国債発行は通貨発行ではない

これも反緊縮派が作り出したalternative factであって事実ではない。

国の財源調達手段には①徴税、②借入(主として国債発行)、③通貨発行(中央銀行からの直接借入を含む)の三つがあるが、近現代では①②がメインで③はほとんど行われていない。そのため、②と③を混同させてミスリードしようとする言説が出てくるわけだが、額面が100円の割引国債を発行しても(通常は)100円未満の通貨しか調達できないことからも、借入と通貨発行が別物であることは明白である。

第一次世界大戦時のアメリカでも戦費調達に①②③が検討されたが、③の通貨発行は早々に棄却された。通貨の増発は通貨価値の希薄化(購買力の低下⇔物価の高騰)を招くためである。

Wars are expensive and, like every governmental effort, they have to be financed through some combination of taxation, borrowing, and the expedience of printing money. For this war, the federal government relied on a mix of one-third new taxes and two-thirds borrowing from the general population. Very little new money was created.
For McAdoo, printing money was off the table. The experience with issuing “greenbacks” during the Civil War suggested that fiat money would generate inflation, which he thought would lower morale and damage the reputation of the newly issued paper currency, the Federal Reserve Note.

②の借入(国債発行)では、市中銀行が引き受ける場合は通貨が発行されるが、銀行以外(機関投資家や公衆)が引き受ける場合は既に市中にある通貨が政府に移転されるだけで通貨は発行されない。市中銀行が引き受ける場合も通貨を発行するのは銀行であって政府ではない。

国債は多くの国で中央銀行の金融調節に用いられている現金同等物だが、そのことは国債発行が通貨発行に等しいことを意味しない。

「財政はスペンディングファースト」も反緊縮派に広まったマントラだが、これも借入と通貨発行を混同している。財政支出は税収と将来の税収を担保にした借入で賄われており、通貨発行は財源にはなっていない。

反緊縮派のデマに騙されないよう注意されたい。

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