日本の帝国主義化と円高傾向

松尾匡がまた妙なことを書いている。

東南アジアにかぎらず、この間、企業の海外進出はどんどん進んできました。その結果、海外子会社からの利潤の送金が年々高まっています。これは将来的にも増える一方になるでしょう。
これは外貨で送金されるので、日本では円に換えなければなりません。ということは、円高になります。つまり日本経済には長期的に通奏低音として円高圧力がかかり続けるということです。
当面見通せる将来は、一生懸命政策的に抑えることのないかぎり、円高傾向が自然であると見込まれます。
今後円高が進むと、中小零細企業や農畜産業者が消費税・コロナ不況に加えてさらなる打撃を受け、産業空洞化が進行することになります。
これから拡大するアジアの大衆需要を取り込むために、その市場の近くに進出して現地の安い賃金・低い労働条件で生産し、その一部を日本向けに輸出すればよろしい。

企業の海外進出(直接投資)がどんどん進むことは資本流出による円安要因であり、産業空洞化・輸入増加(→貿易赤字拡大)も円安要因である。為替レートはこれら複数の通奏低音と投機のベクトルの合成によって決まるので、円高傾向が自然であるとは言えない。

画像1

画像2

松尾は企業の海外進出を「搾取するため」としているが、東南アジアや中国では貧困化が進むのとは逆に賃金が大幅に上昇して日本との格差は縮小している。

日本企業が東南アジアにたくさん進出するのは、低賃金で現地の人々を搾取するためです。

これ(⇩)も当たらずと雖も遠からずだが、それならケインズの「国家的自給」が処方箋になるはずである。しかし、松尾のような左派・リベラル派にとっては、保護主義は排外主義・ファシズムであり打倒しなければならないものなので(ケインズはファシスト)、結果的には批判するネオリベラリズム・グローバリズムに加勢することになっている。

現代の日本の帝国主義化は、低賃金を目指して企業の海外移転が進んで国内の雇用がなくなるし、海外子会社からの利潤送金のせいで円高が進んで国内景気は悪化するし、海外進出企業の低賃金激安製品が逆輸入されて国内競合産業は壊滅するし、労働者階級にとっても中小零細業者にとっても、全くもってろくなことはない路線です。

安倍首相の「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」が「国家を超える主義」であり、昭和の大日本帝国に類似していることは事実だが、

例えば、「超国家主義」という多義的な言葉である。学術用語というより政治的罵倒のレッテルとして使われてきた。しかし、「国家を超える主義」と解釈するならば、国境や民族を越えた国際協調主義、自由貿易主義をも含む概念となる。超国家主義をも追い風として国民一般の対外認識は向上したのである。

大陸や東南アジアの利権で米英等と衝突して戦争に至ったように、今度は中韓と衝突して「悪くすると本当に戦争までいく」というのは流石に考え過ぎだろう。日本が独力で戦争するほど国力を増強できるとは考えにくい。

松尾とその仲間についてはこちら(⇩)も参考に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?