「失われた30年」を止められなかったのは成功だったから

現状認識には概ね同意できるが、構造改革によって日本経済は失敗したのかもしれないが、日本企業は失敗していない、というより「利益が増えている」のだから成功しているということが重要である。

90年代以降、様々な制約を取り払い企業間の競争が活発になれば経済が活性化すると考え、規制緩和などの構造改革を実施してきました。それまでの特定産業の育成を目的とする政策から、規制緩和や減税など市場環境を整えることを目的とする新自由主義的な政策へと転換していったわけです。
ところが、そうした政策は結果として期待通りにはいきませんでした。経済成長は停滞し、給料の上がらない国になってしまいました。規制を取り払えば企業は元気になり、うまくいく――。そういうわれわれの考え方、環境づくりが結果につながらなかったのだと思います。

実はここ10年ほど、日本の資本金10億円以上の企業は売上額がほとんど変わっていません。内訳を見ると売上原価が下がって利益が増えている。つまりコストカット型になっているんです。
本来なら、経済回復に向けて新しいことに挑戦していかなければいけなかった時期に、日本全体が、特に国内においてコストカットの方向に進んでしまったのです。

日本企業は経済産業省の思惑通り、株主重視経営を成功させている。

内閣府「国民経済計算」|2000年基準
*は法人企業の分配所得、海外直接投資に関する再投資収益支払前
2015年基準

クローズアップすると、配当が劇的に増えていることがよく分かる。

2000年基準
2015年基準

人件費抑制&配当激増が株主重視経営の成功を表している。

企業にとっては現状は「成功」なので、変わる必要性がない。「様々な制約を取り払い企業間の競争が活発になれば経済が活性化する」という浅知恵で構造改革を進めたエリートの取り返しのつかない失敗である。

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