賃上げを阻害する二つの要因
またまた同じネタだが、よくある誤解について。
日本だけが賃金が上昇しない理由は、繰り返しになるが経済全体が成長していないからである。
経済が順調に成長していれば、その分だけ物価や賃金も上昇していくのが普通である。逆に言えば、経済成長なしに賃金が持続的に上昇することはあり得ないわけだが、どうすれば経済の持続的な成長が可能になるのだろうか。最終的には企業の生産性を向上させる以外に方法はない。
日本経済は2002年1月~2008年2月には戦後最長(73か月)、2012年11月~2018年10月には戦後二番目に長い(71か月)景気拡大をしている。「バブルの負の遺産」の清算が一段落した2002年以降の実質成長率は他の先進国と同程度なので、「経済全体が成長しないから日本だけ賃金が上昇しない」は正しくない。
経済成長しているにもかかわらず賃金が上がらない理由についてはこの記事👇などで考察済みだが、
①大企業が株主至上主義経営に転換した、②「売上増が見込めない→固定費を上げられない」との将来展望が定着した、の二点が特に大きな要因だと考えられる。①は金融システム改革(金融ビッグバン)、②は財政構造改革の成果と言える。
賃上げが止まったために、安倍政権が当初見込んでいた「経済の好循環」は起動せず、トリクルダウンは生じなかった。
いわゆるリフレ理論は、将来のマネタリーベースの量を増やせば現在の予想インフレ率が上がるという「予想が現在を決める」というものだが、賃金が上がらない背景にも、人口減少→売上の持続的拡大が見込めないという予想がある。
もちろん、量的拡大が見込めなくても、金額ベースでの拡大は可能だが、最大の「需要家」である政府が歳出や公務員給与の削減に邁進したことが、民間部門の「日本経済は金額ベースで成長しない」との予想を強固にしてしまった。