2020年頃に名目GDP600兆円

安倍首相(当時)は2015年9月24日に、2020年頃に名目GDP600兆円を達成すると宣言していた。

当時の2005年基準では2015年の名目GDPは約500兆円だったので、5年間で1.2倍(年+3.7%)ということになる。

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この増加率を現在の2015年基準に当てはめると、2020年には640兆円強になるが、実際には540兆円どまりだったので、100兆円の未達になる。

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2020年の落ち込みは不可避だったにせよ、2016年から「達成シナリオ」からの遅れが続いていたので、空約束だったことに変わりはない。

未達に終わった根本には、安倍政権が描いた「経済の好循環」が回らなかったことがある。(下図は首相官邸webサイトより/作成が経済産業省に注目)

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企業は史上最高益を達成し、就業者も増加したものの、実質賃金の伸びは低く、家計消費も盛り上がらなかった。利益の急増に設備投資が追随しなかったために、増えたのは配当と内部留保(→現預金と対外直接投資)だった。

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この構図は2000年頃の日本銀行の「ダム論」が実現しなかったことと似ているが、当時と比べてマクロ経済や企業経営の環境が大幅に改善していたにもかかわらず、同じような結果に終わったのは、「ダムからの放水」を妨げる力、つまりは「経済の好循環」を止める力が格段に増していたためと考えられる。

その力とは、企業に資本効率の向上と株主利益の最大化を迫る投資家からの圧力だが、名目GDP600兆円を宣言した5日後ニューヨークの金融関係者向けスピーチ(⇩)で強調していたように、安倍首相がその力の強化を最優先していたのだから、目標が未達に終わったのは必然だったと言える。

岩盤のように固い規制を、私自身がドリルの刃になって、打ち抜いていく。安倍内閣の改革は、どんどん進んでいます。
中でも、私の改革リストのトップアジェンダは、コーポレートガバナンスの改革である。繰り返し、そう申し上げてきました。
本年6月から、コーポレートガバナンスコードが、2000社を超える上場企業に、適用されるようになりました。独立社外取締役を選任する企業は、この2年間で倍増しました。今や、ほぼすべての大手機関投資家が、スチュワードシップ・コードを受け入れています。
形式だけでなく、実効的にガバナンスを機能させることが重要です。CEOなど経営者の選定プロセスの透明化、株式持ち合いの解消に向けて、チェックする仕組みを新たにつくります。政府と東京証券取引所が協力して、今後も、機動的に改革を進めてまいります。
すでに日本企業はその「可能性」を開花させつつあります。昨年度の経常利益は、5000億ドルを上回り、過去最高となりました。日本企業のROEは、3年前と比べて、50%以上、上昇しました。

安倍首相がこの矛盾を自覚していたのかは定かではない。

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