喜べない対外純資産世界一

当noteと同じ見方をしているので紹介。

直接投資の比率が増加したのは、日本企業が「縮小し続ける国内市場に投資をするより、海外企業の買収や出資を通じて時間や市場を買うほうが中長期的な成長につながる」と判断した結果とも言える。
「世界最大の対外純資産国」としてのステータスは、日本企業が国内市場を見限って海外企業の買収や出資にいそしむような「失われた時代」の副産物とみなすことができるだろう。

画像3

画像1

画像4

D.アトキンソンは対外直接投資増加の影響は軽微としているが、国内設備投資の約2割の規模に拡大しているので軽視できない。

画像5

画像6

直接投資の急増は、この10年弱で進んでいるトレンドだ。「失われた20年」を経て、多くの日本企業が「国内市場には期待収益の高い投資機会はない」と判断した結果なのだろう。
2010〜2020年の10年間は「日本の企業部門が日本という国を見限り始めた期間」という解釈は、対外純資産の内訳を見る限り、もはや的外れとは言えない現状がある。

1953年のGMのウィルソン社長の発言"what was good for our country was good for General Motors, and vice versa"に象徴されるように、「国民経済」の枠組みでは企業のインタレストとナショナルなインタレストはほぼ一致するが、トランスナショナル(グローバル)な枠組みになると両者が一致するとは限らなくなる。企業のインタレストを優先すると、経済成長率低下や分配不平等などの問題が生じることもあり得る。

「企業の国際化」とは、企業の経済活動を国内に限定せず、海外に直接投資を行い、海外に子会社をいくつもつくって、いわゆる多国籍企業になることを意味している。
ナショナルなインタレストよりもトランスナショナル(transnational)な企業のインタレストの方が重視される――これが「企業の国際化」である。

宮崎義一が予測していた通りで、国民経済の枠組みを金融ビッグバンなどの一連の構造改革によって解体(脱構築)し、トランスナショナルな枠組みに再構築した帰結として、ケインズ的な「国債増発→財政支出拡大」では解決が困難な経済問題(貧困・分配不平等・不況)が現れたわけである。

思考の枠組みをトランスナショナルな経済にまで拡大したとき、ケインズがかつて「国民経済」の枠組みの中においては解決可能であると確信していた「経済問題」(貧困、分配不平等、不況)がにわかに巨大な難問としてわれわれの眼前にその実体を現すだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?