成長と分配の好循環と金融所得課税

金融所得課税強化→「日本売り」→日本経済が大打撃、という脅しが投資家界隈から聞こえるようだが、根拠のないポジショントークなので一般大衆は無視すればよい。

株価が上がれば景気が良くなり賃金も上がるわけでもなく、逆に株価が下がれば景気が悪くなって賃金が下がるわけでもない。日経平均株価が3万円でも2万2千円でも日本経済全体にはほとんど影響がない。マネーゲームをする投機家たちを税制優遇しても、国内生産や家計消費が活発になるわけではない。

日本は先進国からの投資(資本流入)に依存する途上国のような経済構造ではないので、このような見方👇は当てはまらない。

上場株式市場における投資の実に半分を外人投資家に依存している今日、未開文明に見える非市民社会的原則が残っていては、彼らの投資を呼び込むことができない。彼らがお金を出してくれないと、日本経済の基幹をなす製造業でさえ動かなくなります。

そもそも、金融所得課税強化の話が出てきた背景には、日本でもこの👇ような構造変化が生じた事情がある(「労働に対する税金である所得税」は日本の社会保険料に相当)。金融所得課税強化への反対は、金融資本主義のさらなる強化に加担するに等しく、消費税増税にも反対できなくなる。「税金は財源ではない」という妄言は取り合わない。

ヨーロッパでは、20年来、消費に対する税金である付加価値税(TVA)と労働に対する税金である所得税は増税されてきた。これらの税の対象となるものに共通する性格は、移動が簡単ではないということである。一方で、国家は気軽に移動できる資本に対しては減税している。資本に対しては減税、労働に対しては増税。企業に対しては減税、サラリーマンに対しては増税。すなわち、国家もまた、金融資本主義のさらなる強化に加担しているのだ。

金融資本主義に基づく構造改革によって破壊されたのが岸田首相が復活を企図する「成長と分配の好循環」である。

ケインズ理論の主たる帰結は、もちろん景気後退期における国家による投資であるが、それより目に付きにくいが構造に関わるものだけにより重要な帰結は、自国の労働者階級を豊かにすることが得策であるという考えを西側ブルジョワジーが受け入れた、ということである。経済発展期における労働者の賃金の持続的上昇は、消費の規則正しい上昇をもたらし、それが生産の総体を吸収する。

グローバリゼーションが進むと、労働と需要を自国の労働者階級に依存する必要がなくなるので、ブルジョワジーがこの「損して得取れ」の考えを受け入れられなくなる。日本でも金融ビッグバンなどの諸改革によって労働から資本への大規模な所得移転が起こり、配当と内部留保が急増した。内部留保増加の大部分は金融資産の現預金と対外直接投資なので、国内需要の増加には結びつかない。

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賃金→家計消費として「生産の総体を吸収」していたカネが退蔵と海外流出に回るようになったことが日本経済のデフレ傾向と停滞色が強まった主因であり、更にこの👇ような問題にもつながっている。

共産主義諸国のプロレタリアートの奴隷的境遇は、長期的にはいくつもの経済的帰結をもたらすが、その最も重要なのが技術的停滞である。東欧諸国とソ連の労働者は、いかなる自衛手段(組合、スト権)も持たない。その結果、賃金に関わる要求を実現することができない。賃金の上昇が停止していると、工業への技術的進歩の適用による機械の生産性の上昇も、[労働者の生産性が低いため]無駄に終わるのである。

橋龍・小泉改革とは株主利益・投資家利益を優先するものなので、一般労働者が「負け組」になるのは必然だったと言える。勝ち組の狙いはこの構造を続けることなので、今後は岸田首相を妨害するために負け組を「肉屋を支持する🐷」へと誘導する工作が予想される。

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