日本の基幹産業が買収されることを(本心では)歓迎する人々

自由民主党の有力政治家が、日産自動車が中国企業に買収される可能性を懸念するツイートをしていたが、対内直接投資の増加を推進してきたのは当の本人ではないのか。

安倍政権発足直後に策定された「日本再興戦略(成長戦略2013)」では、

対内直接投資の活性化に向け、特区制度の抜本的改革や、政府の外国企業支援・誘致体制の抜本的強化。
2020年に対内直接投資残高を35兆円(2012年末時点17.8兆円)に倍増。

とされていた(2018年末の対内直接投資残高は30.7兆円)。

2014年1月には安倍首相が世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)でこのように演説している。

企業のボードメンバーたちに対する、大いなる刺激も必要でしょう。
24日からの国会に、会社法改正を提案します。これで、社外取締役が増えます。来月中には、機関投資家に、コーポレート・ガバナンスへのより深い参画を容易にするため、スチュワードシップ・コードを策定します。
それらを実現させれば、2020年までに、対内直接投資を倍増させることが可能になります。
そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう。

2014年9月にはニューヨーク証券取引所でこのようにスピーチしている。

日本で海外の選手が活躍し、米国で日本の選手が活躍する。もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました

2019年10月には国会の所信表明演説で対内直接投資残高の増加を「成果」として誇り、さらに促進することを強調している。

政権発足後、強力にコーポレートガバナンス改革を進めた結果、日本企業に対する海外からの直接投資残高は、五年連続で過去最高を更新し、十兆円以上増加しました。
会社法を改正し、全ての大企業に社外取締役の選任を義務付けます。グローバルスタンダードに沿って、経営の透明性を一層高めることで、海外から成長の活力を取り込んでまいります。

日本企業が買収されることも対内直接投資であり、国境や国籍にこだわらない時代なのだから、日本の基幹産業が外資に買収されることも歓迎するべきだろう。中国人観光客を熱烈歓迎していたも安倍政権である。

安倍政権に先駆けて外資による乗っ取りを歓迎していたのが自称「広義のリベラリスト」の宮台真司である。

経済的な国力が下がることも超OK。もちろんその結果引き起こされる差別や抑圧があれば、それに対して糾弾していくことはありえますが、経済的な国力が下がること自体で直ちに困るという立場には立っていません。

差別や抑圧は許さないが、国民生活が貧しくなることは超OK――優先度が"衣食≪礼節"――というのがリベラルの特徴)

日本のさまさまな産業が外資系によってのっとられていくことも、過渡的には必要だとさえ思っています。不合理な雇用環境、性別役割分業、さまざまな問題を抱えた家族制度、そうしたものが解体、再組織されるためには、どうしても外国資本が入ってくる必要があります。
上場株式市場における投資の実に半分を外人投資家に依存している今日、未開文明に見える非市民社会的原則が残っていては、彼らの投資を呼び込むことができない。彼らがお金を出してくれないと、日本経済の基幹をなす製造業でさえ動かなくなります。
僕は試行錯誤と淘汰のために、日本がいったんは奈落の底に突っ込んでいくべきだろうとさえ、思っています。

「未開文明に見える非市民社会的原則」をグローバルスタンダードに置き換えて日本社会をリセットする(一変させる、つまりは日本文明のDNAを西洋のものに置き換える「新世紀の文明開化」が宮台の夢だったわけだが、コロナショックで日本経済が奈落の底に突っ込む懸念が高まっている現在は、淘汰と外資による乗っ取りを進める千載一遇のチャンスということになる。

外資に期待する宮台の発想は、これ(⇩)に通じるものがある(勝った方を「いい男」とみなす)。

最後に、平時の男たちの怠惰は、いざ戦時に男たちが身を挺して女子どもを守る働きによって免責してもらえるだろう、という考えがある。ところでちょっと待てよ、男たちはいったい何から女たちを守ることになるんだろうか。考えてもみると、これもバカバカしいことがわかる。男たちは他の男たちと争いを起こして、自分の女たちを守っているだけである。「守られて」みなければ、敵の方がもっと「いい男」かもしれないのだ。
古代から現代まで、集団が混じり合う際には常に、権力を持つ集団の男性と権力を持たない集団の女性との交配という「性的バイアス」が見られる。
古代イベリア人のDNAの多くが、ステップ地帯の人々のDNAで置き換えられた。
「影響は男性にとても偏っていたようです」とナショナル ジオグラフィック協会の上級プログラムオフィサーを務める遺伝人類学者ミゲル・ビラー氏は話す。

安倍政権も宮台も上野も、日本社会の基盤(岩盤)を解体・破壊する「外患誘致」を熱望しているのだから、一般の日本国民の生活がよくなるはずがないのである。

右も左もすべてリベラル

付録

政治的観点からあえて言わないことはあるし、あえて繰り返すこともある。ウソは言わないが、僕の発言には多くの省略があり、不安をあおる言い方もします。僕は情報戦を戦う確信犯です。
上野 そう。だから戦略的には動きますよ。私は経験科学の研究者だから嘘はつかないけど、本当のことを言わないこともある。
古市 つまり、データを出さないこともある?
上野 もちろんです。
古市 それはいいんですか?
上野 当たり前よ。それはパフォーマンスレベルの話だから。
上野 そう。その話を小熊英二さんに話したら、「社会運動家としては正しい選択です」と言ってくれました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?