工作機械受注の大幅減を消費税のせいにするのは短絡的

景気の先行きを示す工作機械受注額が10月、11月と前年同月比で大幅に減少したことや、今年度の税収が当初見込みを下回ることを「消費税率引き上げのせいだ」と騒いでいる人がいるが事実誤認である。

工作機械受注額の前年同月比は2017年末~2018年初にピークアウトしてから下落を続けており、消費税率引き上げはその流れに乗っただけである。

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認識しておかなければならないのは、内需よりも外需が多いことと、内需が外需に左右されていることである。そのことは、東日本大震災や2014年の消費税引き上げよりも、チャイナ・ショックや米中貿易摩擦の影響が大きいことから見て取れる。

2008年9月:リーマンショック
2011年3月:東日本大震災
2014年4月:消費税率5%→8%
2015年6月:中国株大暴落(チャイナ・ショック)
2018年3月:米中貿易摩擦が本格化(下の記事を参照)
2018年10月:安倍首相が消費税率引き上げを決定
2019年10月:消費税率8%→10%

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2014年の消費税率引き上げが景気後退を招かなかったのは外需のサイクルの上昇局面だったためだが、今回は下降局面に引き上げてしまったので景気が失速している。リーマンショック級の逆風でなければ引き上げても大丈夫というのは希望的観測に基づいた判断ミスと言わざるを得ない。

2001年のITバブル崩壊後の日本経済は、海外経済(特に米中)との連動性が強くなっている。積極財政派は「消費税を減税して財政出動すれば日本経済は力強く復活する」と信じたいようだが、現実には米中が巻き起こす風に翻弄される軽量級に落ちぶれているので、「JGPで国民に仕事と給料を与えればすべて解決」などと現実逃避しても何の解決にもならない。まずは自立性を失った現実を直視することである。

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反消費税クラスタが認めなければならない事実

1997-98年の景気後退の原因は消費税率引き上げではなく11月に発生した金融危機(→信用収縮)とバランスシート不況(「三つの過剰」解消)。

2014年の消費税率引き上げは駆け込み需要の反動減にとどまって景気後退には至らなかった。税収も増えている

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消費増税が景気にマイナスに働くことは間違いないが、その他の要因、特に近年では海外要因を軽視しては判断を誤る。日本経済が米中に翻弄されるほど弱体化したのは、消費税ではなくグローバリゼーションと構造改革のためである。

歴史を自分の願望に沿うように修正してはならない。

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