中間層を崩壊させたのは政治だけか?

その通りなのだが、中間層を崩壊させる「改革」に積極的な議員ほど当選する傾向があったのだから、国民が望んだ世界が実現しただけと言うしかない。今回の自民党総裁選でも、メディアは急進的改革派の河野候補に好意的で、党員・党友票でも断トツだった。

2021年9月29日に自民党の総裁選が行われ、その後には総選挙が控えている。政治家が「中間層の底上げ」を訴えるが、考えてみてほしい。もとはといえば、中間層を崩壊させたのは政治ではなかったか。
大企業や有名企業ほど、「嫌なら辞めろ。代わりはいくらでもいる」というスタンスで、若者が使い捨てにされた。こうした状況に警鐘を鳴らすためには、経営者の見方を取り上げなければならないのではないか。

記事には2005年の伊藤忠商事の丹羽宇一郎社長(当時)へのインタビューがあるが、ロナルド・ドーアも2004年の著書で同様の指摘をしていた。

日本企業の性格はこの10年間で本当に変わったと思います。
もっとも端的にいえば、経営者マインドにおける経営目標の優先順位の変化です。15年前だったら、株価の維持よりも従業員の待遇をよくすることが、ずっと重要に思われていました。今はその逆なのです。
賃金が上昇しないのは、経営者マインドの変化、すなわち株主への奉仕を優先目標にしてきたことに起因しています。

21世紀に入ってからの日本経済は他の先進国並みの経済成長をしてきたにもかかわらず、多くの国民が「日本経済は成長していない」と誤解している主因はこれなのだが、有識者(とされる人々)はこれを無視して財務省や日本銀行の批判を繰り返してきた。企業経営の変化に言及する際も、それは日銀や財務省の引き締め政策のためにやむを得ずとった行動だと擁護した。

日本経済全体を左右する重大な問題を、氷河期世代の問題に矮小化してきたことが、この問題が放置されてきた根底にあるように思われる。

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