「個人」「自由」と出生率

西側のヨーロッパ諸国では、第二次世界大戦後に生まれた世代が成人になった1960年代後半から早婚・早産・多産のベビーブームが終わって合計出生率は急落したが、その後の展開は①凡そ1.7以上に回復した国々(英仏と北欧)と、②1.5を下回る低出生率が定着した国々(南欧とドイツ語圏)に大別できる。

Tilastokeskus, Insee, ISTAT

①と②の違いだが、子の親からの独立性の強弱(自由度の高低)→男と女のカップリング確率の高低→出生率の高低につながるという仮説が立てられる。

男も女も成人すると親から離れて「個人」として自由に活動する国々では、潜在的パートナーと遭遇する確率が高くなるだけでなく、男女同一化(⇔性役割)の意識も浸透しやすい。そのことが、「男女平等が進むほど出生率が高くなる」という誤った因果関係を定説(北欧神話)にしてしまったのではないかと考えられる。

しかし、2010年頃から①の国々でもTFRの低下傾向が鮮明になってきた。これは、東西冷戦終了後に生まれたポスト冷戦世代では「個人」や「自由」の観念が一段と強まり、個人を貫くために結婚しない自由や子供を産まない自由(childfree)を選択するという人生観が普及してきたためではないかと考えられる。

これは現時点での仮説であり、確定的なことが言えるのは今の20代が40代になる十数年~20年後になる。

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