国の財源と借入限度

貸家から家賃収入を得て生活している人(大家)を考える。大家は無借金経営で、借り手がつかなくなって収入が途絶えるリスクは無視できるとする。

大家は家賃収入をほぼ丸々消費支出に充てているが、家賃が入るのが月末なので、翌月の下旬に急遽大きな買い物をしようとしても、手許のキャッシュが足りないので買えないことが度々あった。

そこで、この事情を知ったある金融機関が、将来の家賃収入から返済することを条件に、月中に発生するキャッシュ不足分を貸し出すことになった。大家は金利を支払う必要はあるものの、借入を利用することで急な支出にも対応できるようになり、キャッシュマネジメントを効率化できた。

キャッシュに色が付いているとすると、以前の支出の原資はすべて家賃収入だったが、借入を使うと家賃収入が入る前に支出できるので「原資は家賃収入」とは必ずしも言えなくなる。

しかし、このことを以て「家賃が支出の原資というのは誤り」と言うのもまた誤りである。家賃収入があるから借り入れできるのであり、長い目で見れば「消費支出=家賃収入-利払費」なので、やはり支出の原資は家賃である。

これと同じことが国の財政についても言える。国には途絶えるリスクが限りなく低い収入である税金があるので、国債や国庫短期証券を発行して「徴税の前に支出」することができる。このことを「税金は国の財源ではない」と解釈して目から鱗を落としてしまう人もいるようだが。そうではないことは大家→国、家賃収入→税収に置き換えればわかることである。

現代の世界標準では、国は支出を賄うために貨幣発行しないので、民間銀行が発行した貨幣を民間部門から直接または間接的に税や借入によって調達しなければならない(中央銀行が貨幣を発行して仲介)。

国が民間と違うのは

①永続的存在なので返済期限がない
②収入が安定しているので信用リスクを無視できる

ことだが、将来の収入を裏付けとして「借りる」という本質は同じである(借り手の将来の収入と返済を裏付けとして発行されるのが信用貨幣)。大家の借入限度が家賃収入と利払費によって決まるように、国債の発行限度も税収と利払費によって決まる。

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