もはやデフレではない

ベストセラーの『FACTFULNESS』には「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」「賢い人ほど世界の真実を知らない」とあるが、

これは消費税率引き上げ反対&積極財政を主張するMMTerに当てはまるようである。

彼らによると現在の日本経済はデフレの状況にあるとのことなので、

「いま、日本経済は成長できずに衰弱していくデフレの状況にあります。デフレ不況から脱却する前に消費増税を行えば、破壊的な経済被害をもたらします。消費が著しく低迷し、国民の貧困化が進んで格差社会が拡大する。そればかりか、国の財政も悪化することは避けられません。そして、10%へのアップが予定されている2019年10月時点では間違いなく、デフレ状況のままですから、消費増税は深刻な被害をもたらします」
何といっても消費増税のせいでデフレと財政悪化がもたらされたのですから。

ファクトチェックをしてみよう。

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第二次安倍政権が発足した頃から、消費者物価はデフレからディスインフレに転換している。特に、1997年から長期停滞していたサービス価格が微弱ながら上昇に転じたことと、食料価格が著しく上昇(→エンゲル係数の上昇)していることが目立つ。もはやデフレではないことは明らかと言えよう。(10月の消費税率引き上げによってデフレに再転落する可能性はあるが。)

彼らに「データを基に日本経済を正しく見る習慣」が無いことになるが、そうすると、彼らの「緊縮財政が諸悪の根源」「積極財政が日本経済を救う」などの主張も怪しくなってくる。

消費者物価指数で注目されるのは、サービス価格と財価格の比の長期上昇トレンドが、2003年以降は横ばいに転じたことである。トレンドが続いていたとすると、現在の消費者物価指数総合は約15%、過去のインフレ率も年率+1%ポイント程度高くなっていたことになる。

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アメリカと比較すると、日本の異常性がより明確になる。

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この日本経済の変調の主因と疑われるのが、2002年の「トヨタショック」である。

史上最高益のトヨタがベアゼロに踏み切ったことで、他の企業も追随。05年まで賃金抑制期が続くことになる。
グローバル競争に勝つために、人件費はできるだけ抑える。利益1兆円が確実なトヨタを率いる奥田氏の強い姿勢は、ほかの企業にも伝播する。それは一つはベアゼロであり、労働の非正規化=非正社員を増やすことであった。
トヨタがつくった賃金抑制の流れは、企業業績が増益に転じ始めた03年以降も猛威を娠るうことになる。

サービス価格は財価格よりも賃金との連動性が強いが、トヨタがつくった賃金抑制の流れのために、企業利益が大幅に増える一方で、マクロ経済は

賃金抑制→家計の購買意欲減退→企業はサービス価格を上げられない
企業は賃金を抑制できる→サービス価格を据え置ける(競争の必要上)

の停滞の均衡に陥ってしまったと考えられる。

積極財政派やMMTerは「財政政策が景気を左右している」という思い込みが強すぎるために、日本経済の真実が見えないのだろう。

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