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神戸新聞〈泉・明石市政を考える〉が甘いので実績を対全国比で評価する

明石市の泉市長を2019年の「火つけてこい」の暴言発覚→辞職の大ピンチから救った神戸新聞が泉市政について特集しているが、その内容が甘いので当noteの過去記事から参考データを示す。大部分は既出の内容をアップデートしたものであることをお断りしておく。

泉房穂・明石市長はツイッターで「まちの好循環」というフレーズを好んで使う。

泉氏が描くシナリオはこうだ。子育て支援などで人口が増え、市税収入や地価も上昇、新たな財源で施策を充実させる-。

これは机上の空論で、「まちの好循環」は実現していない。泉市長は無いものをあるように偽っている

以下の二点には留意がいるが、2011年5月に泉市長が就任してから明石市の市税収入が増加基調にあったことは事実である。

  • 泉市長のツイートの「8年で32億円増」は市税収入の合計ではなく、個人市民税、固定資産税、都市計画税(以下、三税)の計

  • 2018年度から事業所税が新たな税目として加わっている(←人口30万人超え)

総務省「地方財政状況調査」より作成

しかし、この税収増が子育て支援の拡充(≒児童福祉費の大幅増)によるものか否かは明石市だけを見ていては判断できず、対照群(他の自治体)あるいはベンチマーク(市町村計)との比較が必要である。ここでは市町村計をベンチマークとしたベンチマーク比で判断する。

市町村計の税収も似た推移をしており、三税計も明石市と同じく、2013~2020年度にかけて8年連続の増収となっている。なお、2018年度に道府県から政令指定都市への税源移譲(個人住民税の所得割の税率が6%から8%に)が行われたため、2018年度以降の政令指定都市の個人市民税所得割分を6/8にしたものをグラフに参考値として「政令指定都市調整後」と表示している。

総務省「地方財政状況調査」より作成
東京都の徴収分を含む

ベンチマーク比、すなわち明石市が市町村計(全国)に占める割合の推移を見ると、人口は明確に増大に転じているが、課税対象所得と税収には基調の変化が見られない。これは、人口増が全国比での所得と税収の増加につながっていない、つまり好循環が生じていないことを示している。明石市の税収増は全国的な景気拡大→税収増で説明できるということである。

総務省、兵庫県より作成

2011年度→2021年度に児童福祉費は+195億円(135億円→330億円)だが、市税収入は+39億円なので財源には全く足りない。195億円の内訳は一般財源等(主に市税と国の交付金)とその他が+67億円、国庫支出金が+108億円、県支出金が+19億円だった。

では、子育て施策の財源は何か。人口増に伴う市税収入の伸びが貢献している。住民税や法人市民税、固定資産税などで構成される市税収入は、11年度の397億円から21年度には437億円と1割増えた。

総務省「地方財政状況調査」

子育て支援拡充の成果が最も顕著に表れているのが出生数で、泉市長は自分の施策が国レベルでの少子化対策になると喧伝している。

総務省、兵庫県より作成

明石市が子ども施策の少子化対策としての有効性を証明しているのか否かを、明石市と隣接市町の出生数から推定する。

明石市、稲美町、播磨町、加古川市、神戸市を西部(明石市、神戸市垂水区と西区、稲美町、播磨町、加古川市)と東部(垂水区と西区を除く神戸市)の二地域に分けて出生数を比較すると、2004年以降ほぼ10:9の比を保っている。西部と東部の減少ペースに差が無いことは、西部全体には出生を増やす要因の寄与がなかったことを示唆している。その一方で、明石市の出生数が減少していないことは、西部の中で「出産予備軍」が明石市に集まった結果であることを示唆している。明石市が子育て支援を拡充する→「甘い水」を求めて出産予備軍が近隣自治体から明石市に引っ越す→出生も近隣自治体から明石市に移る、というわけである。

兵庫県より作成

明石市の出生数が減っていない(相対的には増えている)のは「国内移民」を呼び集めたためなので、国レベルでの少子化対策にはならないことになる。

30万都市の現職市長の「今、総理大臣になったら、3年で日本の少子化に歯止めをかけ、諸外国並みの経済成長をさせられるくらいの自信はありますが」は実績の裏付けを欠いた大言壮語である。

付録

地上げ屋まがいの暴言を「市民の命を守るための正論」(by 山本一郎)に仕立て上げて泉市長を救ったのが神戸新聞。

(「発言詳報」とあるのは泉市長に共感するように都合よく編集されたもの。)

このアントニウス的な印象操作によって、泉市長が市民思いの熱血漢(⇔反対者は市民の敵)であるとの人物評価が定着した。

もっとも、現在は泉市長に嫌われている模様。


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