金を出せば出すほど成長するんだよ

この「金を出せば出すほど成長するんだよ」「経済成長率は財政支出によってコントロール可能」「財政支出をk%増やせば名目GDPもk%増える」という論外な主張が衆議院選挙にも使われているので再度取り上げる。

《動画は該当の発言箇所で再生される》

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一般的に、国は経済規模に基づいて財政支出を決め、それに必要な租税収入を確保する(不足分は借入で賄う)。インフレand/or実質成長によって名目経済規模が拡大すれば、ほぼ比例的に支出を増やす。税収も名目GDPにほぼ比例する。

例えば、名目GDPが100・税収と財政支出が30の国では、GDPが150になると税収と財政支出は45、GDPが200になると税収と財政支出は60になる。

これ👇は経済企画庁『昭和40年度年次経済報告』の高度成長期の財政運営の分析。

成長率と政府の経常収入、及び経常支出や資本形成といった政府支出の間の時間的な関係をみると、第66表の通りである。一般に経済成長とほぼ同時的に租税収入を中心に政府の経常収入が増加し、それにやや遅れて政府の経常支出や資本形成の増加が起きてきたことがみられる。従って、高度成長による租税収入の高い伸びが財政支出の大幅な伸びを支え、財政による資源配分を可能にしたといえる。

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いわゆる「政府の大きさ」が一定範囲に収まるように財政を運営すれば、名目GDPと財政支出の伸び率は中長期ではほぼ等しくなる。このような財政運営が世界の標準なら、各国の名目GDPの伸び率と財政支出の伸び率を散布図にプロットすれば、原点を通る傾き45度の直線の付近に点々が分布する。これが「ここまで綺麗な相関」になる理由である。

当たり前の話だが、これは「財政支出をk%増やせば名目GDPもk%増える」ことを意味しない。

ちなみに、アトキンソンに絡んでる反緊縮カルト的な狂信者にはれ◯わ信者が多いように見受けられるが、自分では「経済の真実に目覚めた」と思い込む日本経済版のWOKEと言える。ある種の無知な人々には非常に魅力的に聞こえるのだろう。

付録①

冒頭の動画では他にもデマを叫んでいる。デフレも不景気も25年も続いていない。景気が悪かったのはバブル崩壊から10年強の「失われた10年」で、ITバブル崩壊から立ち直ってからは73か月と71か月の長期の景気拡大を達成している。コロナ禍も大不況と言うほどの不況ではない。

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デフレの期間は25年ではなくその約半分に過ぎない。

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IMFの統計によると、1997年→2018年に人口1人当たり名目GDPはベネズエラ200万倍(実質は減少)、アンゴラ6700倍、ベラルーシ3500倍、コンゴ民主共和国1200倍(実質は日本とほぼ同じ)、ロシア40倍になっているが、これらを「人々に投資する積極財政によって驚異的な高成長を遂げた国」「日本も見習うべき」と言ったらアホである。

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名目GDPやUSドル換算GDPを用いて「日本の経済成長率は世界最低」と主張している輩はすべて悪質な煽動者かそれに引っ掛かった情弱の素人なので一切信用してはならない。

なお、👆は「伸び率」ではなく「2018年/1997年の比」、22年間ではなく21年間である。

付録②

藤井聡「日本のGDPは20年間でマイナス20%で世界最低の成長率」

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