日本が変われないのは変われるように変えたから

最近、この👇ような「日本社会は変化を拒絶している」という言説をよく見かけるが、

日本はもう何十年も、経済の低迷に苦しんできた。変化に対する根強い抵抗と、過去へのかたくなな執着が、経済の前進を阻んできた。そして今や、人口の少子高齢化が進んでいる。
日本は、行き詰まっている。

強調は引用者

これらが見落としているのは、日本は1990年代から政治・経済分野で大改革を実行してきたことである。

まさに平成が始まろうとしていた頃のこと、政治シーンのあちこちで「改革」の二文字が見られるようになった。以来30年、日本の統治システムは改革の名のもと、静かに、しかし激しく変貌を遂げてきた。
選挙制度、行政、日銀・大蔵省、司法制度、地方分権……現在の政治を作り出した壮大な理念とその帰結を読み解く。

日本は変化を拒絶しているというよりも、改革派が「変われるように」とシステムを変えたために、変化しにくい構造になってしまったのではないかと考えられる。

その典型例が「政権交代を起こりやすくする」として衆議院議員選挙に導入された小選挙区制だが、狙いとは逆に、自由民主党(と公明党の連立)政権の盤石さが増大している。小選挙区制は第一党にアドバンテージを与える制度なので当たり前と言えば当たり前の結果である。

中選挙区制には自民党内の派閥競争を通じて代議士を入れ替える効果があったが、小選挙区制になってそれがなくなったことも、政治が変わらなくなった一因になっている。

それに、今の中選挙区制にも長所があります。案外見逃されているのは、自民党が一党支配を続けているのに、そのなかでの古株と新人との新陳代謝が起こって、自民党の老化を防いでいることです。中選挙区で同じ党同士が争うからで、小選挙区だったら現職がいつまでも辞めないから、どんどん老化する。自民党が三十年間も政権を握っていて、平均年齢がそう高くならないのは、選挙地盤の世襲ということもあるけど、この中選挙区同士討ちによる新陳代謝が理由です。そうした争いが少ない社会党は自民党より老化が進む傾向があります。

p.97
カーティスの発言

これ👇は改革派の典型的な主張だが、年齢による差別を解消すれば組織の老化が進みやすいことが考慮されていない(年功序列も組織を自動的に新陳代謝させる仕組みと言える)。

年齢による差別は、日本における最大の差別の一つだと思います。募集に当たっての年齢制限もそうだし、定年退職も年齢による差別だと思う。

p.108
山岸の発言

「改革」は企業の活力も低下させている。これ👇は一例だが、"Japan as Number One"の第六章「大企業――社員の一体感と業績」で肯定的に評価されていた諸要素が改革によって悉く潰されている。

日本の経営者に日本の企業の特徴は何かと尋ねると、ほとんどの人が「トップダウン」方式よりむしろ「ボトムアップ」方式を実践している点を指摘する。つまり、企業組織の下部が上層部の命令を待たずにイニシアチブをとって活動する。

p.173

ミドル・マネジメント以下の従業員の間では、コンプライアンスの評判がすこぶる悪い。窒息しそうなほど厳しい締め付けがもたらされている例も少なくないからである。

悪夢の始まり ―― 株主代表訴訟制度の改革

投資家資本主義を支えるアングロ・サクソン流の制度づくりの旗振りをしたのは、経済学者であった。この誤りに気づいた経済学者は少なく、公式に誤りを認めて懺悔しているのは、筆者の知る限り一人だけである。

意思決定を歪めた過剰なリスク管理と法治主義
この「一人」はおそらく中谷巌

改革は

  • 米英をモデルに

  • トップの権限を強化(共和制から帝政へのようなもの)

するものだったが、日本人の気質や日本社会の風土には不適合だったために(違う血液型を輸血したようなもの)、改革派の思惑に反して硬直化を進める結果となってしまった。万事休す。

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