『男はなぜ孤独死するのか』からとりあえず三点

話題になっていたトーマス・ジョイナーの2011年の著書『Lonely at the Top: The High Cost of Men's Success』の邦訳『男はなぜ孤独死するのか――男たちの成功の代償』を読んだのでとりあえず三点について(詳しくは後日)。

一点目は邦題の「孤独死」が適切ではないことである。同書のテーマは男の自殺の多さとその主因が孤独(所属感の減弱)ということだが、孤独死は自殺に限らないためである。

二点目は"spoil"を「甘やかし」とするのがずれているのではないかという箇所が多々見られる点で、これがX上での臨床心理士の感想とそれへの批判と関係している。

三点目は、結局のところ、男が女よりも孤独になりやすく自殺も多いのは、生物学的な男女差に起因しており、個々人ベースでの対策には限界があるのではないか、という点である。特に第二章「原因―甘やかされること(Causes: Becoming Spoiled)」では男女の生得的な違いが男女の生き方・生存戦略に決定的影響を与えていることが示唆されている。

三点目については後日の記事に回すが、第7章のこの👇エピソードにも、男が女と同じように生きられないことが示されている。

火星への荷造り』の中で、ローチは、南極基地で冬を過ごした男性から聞いたエピソードを紹介している。その男性によると、彼と一緒に南極点に行った男たちは、帰国後2、3日、ただ、花や樹木などを眺めて過ごしていたという。グループのひとりが、ベビーカーを押した女性を見つけ、興奮した様子で「赤ちゃんだ !」と叫んだ。男たちは一団となって赤ちゃんに向かって突進し、母親はベビーカーを方向転換させて逃げた。これは、白昼、人通りの多い安全な場所で起きたことだった。

p.229-230

第三に、この同じエピソードで、もしも南極の研究者たちが全員女性だったら、どうなっていたかを考えてみよう。赤ちゃんの母親は逃げ出しただろうか。おそらくそんなことはなかっただろう。大勢の女性が近寄ってくるのは、彼女にとって初めての経験ではないはずだ。一方、男の一団がそんな行動をするのを目にしたのは、おそらく初めてだっただろう。

p.230

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