記者には見えなかった「世界でいちばん男女平等な国」

北欧諸国に行って「世界一の男女平等」に感心してしまう人は、昔なら共産主義国家に行って「人民の平等が実現した理想社会」と感銘を受けてしまったタイプのように思われる。

アイスランドは世界経済フォーラムの男女格差ランキングで12年連続1位。156の国と地域の中で一番、男女平等が実現されている。日本はと言うと下から数えた方が早い120位。一体、何が違うのか。純粋日本育ちの男の自分の目で、その違いを取材したいと思った。

「一体、何が違うのか」だが、国の基礎的条件が全然違う。

人口:37万人(2/3弱は首都圏に集中)
面積:北海道の約1.3倍(大韓民国とほぼ同じ)
資源:水産物、エネルギー(水力発電と地熱)、水資源が豊富

就業者の内訳は男53%、女47%とほぼ半々だが、産業毎に大きな偏りがある。女の49%は公共サービス、教育、医療福祉に集中しており、同部門の72%を占める。

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一方、男は建設業の94%、漁業の90%を占める。力がいる仕事や移動が多い仕事は男が多い(👇の左側は👆の色の薄い5つの合計)。

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アイスランドの男女平等とは、公的部門が女を安全で安定した仕事で雇うことで達成されている(北欧諸国に共通する構造)。

平均通勤時間が15分と職住近接なことも、共働きを容易にしている。

これ👇も、女が少ない産業では平等ではなく女の優遇/男に対するnegative actionになっている。

アイスランドでは2010年、従業員50人以上の企業の役員比率について、男女それぞれ4割以上というクオータ制をとることが法律で定められた。現在、上級管理職の42%、取締役の45.9%を女性が占めている。

女が多い職種が低賃金なのは低生産性と低リスクの反映であり、解決しなければならない課題ではない。

女性が行うことが多い保育士や看護師などの職種は、男性が就くことの多い建設作業員や配管工などの職種に比べて、低賃金の傾向とされる。これは日本と共通の課題に思える。

この男女差を公的介入によって埋めれば、いずれは失敗することはほぼ確実である。

アイスランドは天然資源に恵まれた豊かな国であり、その豊かさでコストのかかる「男女平等」を実現しているだけと言ってもよい。

北欧諸国のジェンダー平等イデオロギーが共産主義と似通っているのは、資本家→男、労働者→女に置き換えた社会革命のイデオロギーだからである。

彼らが自分の見たいものだけを見ているということだろう。
このような集団錯覚の傾向は、知識人の間でかねて顕著だった。
20世紀前半には数えきれないほどの欧州の知識人が、共産主義に心を奪われ、ソ連を熱烈に支持したものだ。
1920年代にこうした支持者の代表団がソ連を訪問し、目にしたものに感銘を受けている。

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