東大教授の周回遅れの少子化対策と思想の力

東京大学の経済学の教授の少子化に関する知識はアップデートされていないので的外れな提言になっている。

「日本の少子化はもはや単体の政策で効くような状況ではない。個々の政策ではなく、少子化対策のパッケージとして捉え、経済的な負担を取り除く必要がある。児童手当や保育所の整備を含む支援策が、合計特殊出生率を上げたとする実証研究は世界中にある」
「日本は世界的に見ても少子化対策にかけるお金が貧弱。社会保障関係支出のうち、子育て支援などに使われる『家族関係社会支出』の国内総生産(GDP)に対する割合は、経済協力開発機構(OECD)加盟国でトップクラスの国からすると半分以下のレベル。まだ増やす余地がある。全体の家族関係社会支出の規模が増えたときに、やっと出生率が(上昇に)動くのだと思う」

日本の家族関係社会支出は近年急増しているものの、先進国の中では少ない部類でトップクラスの北欧諸国の半分以下に過ぎないことは事実である。

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しかし、その北欧でも近年では出生率が低下しており、子育て・共働き支援が出生率を高めるとの見方が疑われるようになっている。北欧モデルは少子化対策としては著しく費用対効果が低いのではないかという疑念である。

“We’re moving towards a China-like situation but without any sort of one-child policy,” explains Senior Research Fellow at Nordregio, Anna Karlsdóttir.
Karlsdóttir is surprised that the generous provisions for parental leave and childcare in the Nordic countries have not had a greater impact on birth rates.
“Although family policy has had an effect on birth rates, the impact has not been as big as one might expect,” says Karlsdóttir.

「児童手当や保育所の整備を含む支援策」の効果が乏しいのは、少子化の主因が非婚化だからであり、非婚化の主因の一つは男の所得減少である。従って、結婚・出産促進に有効なのは結婚後の経済支援ではなく結婚前の所得増ということになるが、国策として推進されたのはその正反対だった。フェミニストとネオリベラルの合作である。

濱口 日本型雇用の特徴のひとつに、給与は「男が家族の生活を成り立たせる」ためのものだという、「生活給」という考え方があります。これが女子の労働と深くかかわってきた。そこでこのテーマから話を始めたいと思います。
上野 50年代から60年代にかけて「生活給」に最も賛成していたのが労働組合でしたからね。春闘で「かあちゃんが働かなくてもすむ賃金をとうちゃんに!」と要求してきたくらいですから。労働組合は女性の敵です(笑)。

労働組合は女性の敵です」に注目。女の賃労働を「解放」とみなすフェミニストにとっては、労働者を性別ではなく単位労働コストで評価する資本家・経営者は共闘できる頼もしい「解放者」である。夫の賃金抑圧のために働かざるを得なくなった妻が増えたことは、フェミニストにとっては「妻を家庭から解放する」作成の大成功を意味した。

世帯を養える賃金を男1人に払う家族給に支えられた 「男性稼ぎ主モデル」こそ、女性差別の根源なのですよ。
正規雇用者の給料を下げて、夫に600万円払っているのなら、夫に300万円、妻に300万円払うようにすれば、納税者も増えます。
年収300万円の20代前半の男女がカップルになったら、世帯収入は600万円になります。それくらいあれば、子どもを産んで育てられる社会をつくれるはずです。それには、最低賃金を時給1500円に引き上げることが、1つの解決策になると思います。年間2000時間働いたら、年収300万円になります。
ネオリベ改革がジェンダー平等政策を推進した理由はなんでしょうか?
答はかんたんです。女に働いてもらいたいから。
「男女共同参画社会は、新自由主義的なベクトルとフェミニズムとの妥協の産物だ」というのは、100パーセント正しいと思います。

1990年代後半からの経済社会の構造改革は、人間が真に「解放」されるためには社会システムの解体(脱構築)が必要とする過激思想に染まった1960~70年代に暴れた新左翼世代が満を持して開始したものだった。少子化と経済格差拡大は彼らの目標が達成されつつある証であり、現在では異民族移入と家族の破壊が焦点になっている(←夫婦別姓、同性婚、等々)。民族集団や家族といったまとまりを破壊して社会を「個」のレベルにまで分解するのが彼らが目標とする「解放」である。

何事も壊すことは簡単だが、一度壊れたものを元に戻すことは極めて難しいので、日本(を含む先進国)はもうどうしようもないのではないだろうか。

上野:留学生も積極的に採用すればいいですね。人口問題、人手不足という点から考えても、移民国家になるという選択肢はもっと検討されていいでしょう。
上野:いつも言うのですが、女性は子宮と共に移動します。現地で妊娠、出産するなというのは、人権侵害です。日本政府は移民の家族形成をさまたげる政策ばかりとってきました。少子化を嘆くなら、外国人にも日本で産んでもらえばいいのです。

これはだめかもわからんね。

付録

経済学者が考える少子化対策が的外れになるのは、思想の影響力を軽視しているからである(西洋思想への無警戒さは日本の一般人の重大な弱点で、活動家はそこに付け込んで社会変革を進める)。ケインズの『一般理論』での警告(⇩)は少子化問題にも当てはまる。Economist→社会学者、political philosopher→思想家、idea→フェミニズム、vested interest→支援策になる。

But apart from this contemporary mood, the ideas of economists and political philosophers, both when they are right and when they are wrong, are more powerful than is commonly understood. Indeed the world is ruled by little else. …… I am sure that the power of vested interests is vastly exaggerated compared with the gradual encroachment of ideas. …… But, soon or late, it is ideas, not vested interests, which are dangerous for good or evil.

フェミニズムとはこのような反社会的過激思想である(これが真のフェミニズム)。

私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。
子どもから解放されないと女性は解放されない
個人的な面では、一番大事なことは働くことです。そしてできれば結婚を拒否すること。
家族は廃止されるべきです。
フェミニズムは死の文化です。フェミニズムのせいで女性は子どもをつくらなくなったわけですから。
子どもが生まれなければ、行き着くところは死しかありません。フェミニズムとは何か。女が男と同じように行動したがることです。ラディカルなフェミニズムが定着したあらゆる国で、女性たちが子どもを作らなくなったのは偶然ではありません。シモーヌ・ド・ボーヴォワールがまさしくそうです。

思想や人間の動物的本性(女の非下方婚志向等々)を考慮に入れない少子化分析にはほとんど意味がない。

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