政府支出と名目GDPの相関関係

「まだやってたの」に同意。学習能力が無い。

シェイブテイルは政府には徴税以外の財源調達手段があることを知らないらしい。金利が上がらなかったのは民間の資金需要が落ち込んでいたからである(日本銀行の低金利政策もある)。

追加で国債を発行し、資金調達するには時間がかかる。3カ月先の7月以降になる見込みだった。それまでの間は、短期的な資金繰りで乗り切るしかない。

補正予算の決定後は、早急に資金が必要となったことから、特別会計(特会)に融通していた資金を返済してもらうことで約40兆円を確保した。それでも合計約57兆6,000億円の補正予算を賄うには不足するため、平成27年の発行以来、5年ぶりとなる財務省証券を6月に発行して補正予算の支出に対応した。

このグラフが示しているのは

  • "政府支出の伸び率≒名目GDPの伸び率"は世界各国共通

ということだが、シェイブテイルと仲間たちはこれを

  • この二つの因果関係は"政府支出→名目GDP"

  • 政府支出を+k%する→名目GDPが+k%になる

と解釈している。尻尾と犬の例えを使うと、尻尾は財政、犬は経済全体なので、尻尾が犬を振り回している/尻尾で犬を完全制御できるのが経済の真実というわけである。

しかし、個々の国で政府支出と名目GDPの伸び率を比較すると、"≒"となっていない期間は珍しくない。日本では2020年度の国と地方の歳出総額は対前年度比+29%だが名目GDPは-4%だった。

総務省「地方財政白書」, 内閣府「GDP統計」より作成

金融危機の1997年度→1999年度も歳出は+10%だが名目GDPは-2%、世界金融危機(リーマンショック)の2007年度→2009年度も歳出は+11%だが名目GDPは-8%と全く一致していない。

アメリカでも、2020年の政府(連邦と州・地方合計)の支出は+26%だが名目GDPは-2%だった。

Bureau of Economic Analysisより作成

大恐慌の1929→1933年には政府支出+13%に対して名目GDPは-45%、第二次世界大戦の1941→1945年には政府支出+281%(3.8倍)だが名目GDPは+76%にとどまった。逆に、1945→1947年には政府支出は-36%だが名目GDPは+9%だった。

Bureau of Economic Analysisより作成

これは短期間なので「反論」になっていないという反論はあり得るが、長期的に"政府支出の伸び率≒名目GDPの伸び率"なら政府支出の対GDP比は一定水準の周辺を推移するはずだが、現実はそうなっていない。

Bureau of Economic Analysisより作成
総務省「地方財政白書」, 内閣府「GDP統計」より作成

シェイブテイルたちの仮説に、名目GDPと税収の関係の定説

  • 税制をいじらなければ税収弾性値は1強(ここでは控えめに1とする)

を合わせると、

  • 政府支出を+k%する→名目GDPが+k%→税収が+k%

となる。支出の増加が同率の自然増収をもたらすので、いくら支出を増やしても財政赤字は(対GDP比で)拡大しないことになるが、それがあり得ないことは明らかである。すなわち、仮説は正しくない。

補足

シェイブテイルたちがいつまで経っても反論を理解できないのは、批判者たちの「因果関係は名目GDP→(税収)→政府支出」を「批判者たちは『支出増には先立つ税収増と名目GDP拡大が必要』と考えている」と解釈しているからだと思われる。現実には不要なので、「批判者たちは無知な商品貨幣論者」「批判者たちは発狂している」となるわけである。

しかし、国庫の資金繰りは「前年度に国庫に貯め込んだ収入を今年度の支出に充てる」というものではないので論駁になっていない。Critical thinkingができていないのはグラフから「真実」を新発見してしまう素人たちである。


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