国債暴落と大逆転のシミュレーション

正月から変な記事だが、頭の体操としては悪くない。

「日本政府は、1兆ドルを超える外貨準備を持っていました。過去の為替介入の際に、円高ドル安を阻止するために買ったものです。平均単価にすると1ドル100円程度でしょう。それを本日、1ドル300円で売ることができました。それにより、現金300兆円を得ることができました」。
「日本政府は、額面1000兆円の国債を発行しています。それを本日、額面の3割の価格で買うことができたので、ドルを売って得た300兆円を使って買いました。結果として1000兆円の発行済国債を、簿価100兆円の外貨を使って買い戻すことができたのです」。
「いまや日本政府は、発行済の国債をほとんど買い戻し終えたので、実質的に無借金です。完全に健全な政府です。格付も戻るはずですし、国債価格も円相場も戻るでしょう。あとは、残骸の整理だけです」と言うのです。

この筆者はこのシミュレーションがお気に入りのようで、他の媒体でも繰り返している。

この規模の取引が1日で成立するということの非現実性をさておくと、円相場が暴落した瞬間に外貨建て資産と円建て負債を相殺すれば、物価と為替レートも元通りで万事OKという話になる。

しかし、借金と利払費が消えても、プライマリーバランスの赤字が出続けることに変わりはない(外貨資産の運用収入は減る)。国は永続的存在なので借金が膨らんでも信用リスクはゼロのままだが、財政赤字がインフレギャップ拡大→悪性インフレを引き起こすリスクからは逃れられない。財政の健全性はストックではなくフロー(インフレ率、金利、利払費)なので、この「大逆転」でも財政はほとんど健全化していない。

この筆者は内容が浅い割には様々な媒体に頻繁に登場するのはなぜだろうか?

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