「格差是正」のボートマッチ

この二択には問題がある。

Q14
格差是正
Ⓐ社会的格差が多少あっても、いまは経済競争力の向上を優先すべきだ
Ⓑ経済競争力を多少犠牲にしても、いまは社会的格差の是正を優先すべきだ

まず「経済競争力」が企業/株主の利益増につながるものなのか、それとも経済全体の成長につながるものなのかが明確ではない。前者なら「企業の収益力の向上(→株主利益の最大化)のために賃金抑制や非正規雇用の拡大を続けるべきだ」とはっきりさせるべきである。

社会的格差と経済競争力がトレードオフという前提にも問題がある。岸田首相の問題意識は「株主至上主義→内需抑制→経済の好循環が止まった」というもので、この見立てが正しければ、資本から労働への分配シフト(→社会的格差の是正)は経済全体にはプラスになる。従って、後者の意味ではトレードオフにはならない。

これ👇はケインズの「人口減少の経済的帰結」での主張だが、日本の構造改革では所得分配の不平等化と株主資本コストの引き上げが進められたので、日本社会は「最終的には社会体制は弱体化し、破壊されるにちがいない」のコースを辿っているわけである。

静止人口のもとで繁栄と国民の平和を維持するためには、所得分配の平等化によって消費を増加させる政策と、生産期間を長期化させることが利益的となるように利子率を強制的に引き下げる政策に絶対的に頼らなければならないというのが、私の主張である。
もし資本主義社会が所得分配の平等化を拒絶し、銀行や金融機関の勢力が、19世紀に支配的であった平均水準(ちなみに、この平均水準は今日の銀行利子率よりも少し低かった)に近い利子率を維持しつづけるならば、諸資源の慢性的な過少利用の傾向が生じ、最終的には社会体制は弱体化し、破壊されるにちがいない。

補足

構造改革前は賃金と設備投資に回っていたカネが、改革後は株主還元(配当と自社株買い)と対外直接投資、現預金の積み上げに向かうようになったことが、企業収益とマクロ経済の乖離をもたらしている。

グラフ下の数字は1996年度→2019年度の増加率

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(法人企業の分配所得、海外直接投資に関する再投資収益支払前)

+58.9%

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+1.4%

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+1.8%

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