MMTのモデルは戦時統制経済
何故か日本では論点にならないが、現代貨幣理論(MMT)がモデルにしているのは第二次世界大戦時のアメリカの統制経済である。
1946年雇用法により、連邦政府の力で「最大限の雇用、生産、購買力を促進する」新たな政治的コンセンサスがまとまった。戦時支出の経験で、経済を不景気から引っ張り出すにあたり、財政手法がいかに強力かが改めて認識され、戦時の賃金物価統制の経験によって、きわめて強力なインフレ圧力ですら直接的な手法で抑えられるのだと改めて認識された。さらに、戦時中の安定した低金利の体験は、重要な社会目標を支える金融の力を改めて認識させた。こうした面のすべてで、戦時中の教訓が生み出した戦後の経済政策理解は、金融政策と中央銀行の役割をかなり軽視するものとなった。雇用法は、その新しい目標を実現するにあたって金融当局が果たすべき役割について、まったく言及していない。FRBの役割は実質的に、雇用法可決後の丸5年間にわたり国債価格を固定しておくだけだ。
これ👇は訳者あとがき。「政府が借金」を「政府が通貨発行」にすればほぼ当たりで、失業者がゼロになるまで政府が最低賃金で雇い入れる就業保証プログラム(JGP)がMMTの核になる。
そして話題のMMTもお金の新しい見方について・・・・・・と思われがちなのは彼らが貨幣国定主義(お上が「これが納税用のお金」と決めたものがお金なのよ、という考え方)を冒頭で打ち出すからだが、実はそっちの面では特に目新しいことは言っておらず、むしろ完全雇用のために政府が借金して強制雇用しろという、戦時中の統制経済のようなものを指向した財政政策の話だというのがメーリングの見立てだが、それが当たっているかどうかは皆さんのご判断にお任せしよう。
New paper. The blog post announcing the new paper tells you why to read it. https://t.co/CJUI4dKpHK
— Perry Mehrling (@PMehrling) February 4, 2020
Like Tobin, Wray consolidates the Fed and Treasury balance sheets and as a consequence sees a fundamental difference between “fountain pen money” and “printing press money”, the former as credit money and the latter as fiat money. Also like Tobin, he wants to use control of the latter for the public good, specifically the achievement of full employment and price stability. Instead of buying goods, he wants the government to hire unemployed labor directly at a fixed wage that then becomes the nominal anchor for prices in general.
「MMTは国家総動員体制の理論」が言いがかりではないことはケルトンのツイートからも明らかで、これが常識になっていないのは不思議である。
Remember, the opening sentence of Lerner's 1943 essay was about winning the war and eliminating economic insecurity. MMT is increasingly seen as an indispensable economic framework in the battle against climate change and inequality. 12/end pic.twitter.com/Bds6IWEOI1
— Stephanie Kelton (@StephanieKelton) March 31, 2019
The right way to budget for a #GreenNewDeal is the way JM Keynes approached the question in his "How to Pay for the War." i.e. national resource planning. It wasn't about where to get the money. It was about how to manage the transition to a war economy.
— Stephanie Kelton (@StephanieKelton) December 3, 2018
They’re talking about managing inflation in the context of rolling out a GND. They’re saying do some of the things we in fact did do during the WWII mobilization.
— Stephanie Kelton (@StephanieKelton) March 1, 2019
I have already said that I recommended following Keynes's approach back in 2018. Because of the scale of the mobilization effort, credit controls, rationing, incomes policies, etc. were needed in WWII. If we are going to do something on that scale ...
— Stephanie Kelton (@StephanieKelton) August 25, 2019
It can also set interest rates wherever it wants them. Or even choose not to issue Treasuries at all.) An often neglected part of the story. Fed fixed rates--short and long--during and immediately after WWII, and the BOJ sets the 10-yr as well as the overnight rate today.
— Stephanie Kelton (@StephanieKelton) March 22, 2020
経済統制は戦争や戦後復興、後発国の急速な近代化・キャッチアップなど、国民が一丸となって国家目標を目指す局面では有効だが、問題はその目標が達成された後で、社会主義諸国は「豊かな社会」を実現できずに崩壊した。MMTには社会主義の轍を踏む危険性があるわけだが、それを回避するためにmobilizationが永続化されることになる(『1984』の世界?)。
西洋のMMT支持者にwokeした人々が多いのはリベラル全体主義のユートピア思想だからで、ミッチェルもベネズエラのチャベス政権に好意的だった。
MMT名付け親の経済学者が断言「財政政策中心の新時代が幕開けた」 - 財政膨張 https://t.co/vsqh6uTrbG
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) February 13, 2020
付録
この訳者の訳文は一見分かり易いようだが、実際はその逆で、一度見ただけではすっと頭に入らないので文意をつかむのに苦労する。訳語にも妙なこだわりがあるようで理解の妨げになる。
訳者あとがきからは、訳者が中央銀行の実務や短期金融市場の仕組みをよく理解していなかったことが読み取れるが、日銀を罵倒していたこの件👇の総括が必要なのではないか。
さて、この処方箋は簡単だ。インフレ期待を起こせばいい。これほど簡単なことはない。日本銀行がお金をいっぱい刷り、これからも当分そうしますよ、と言えばいい。いままでの日銀による金融緩和は、お金はとりあえず刷るけれどすぐやめますからね、と言い続けていたのでインフレ期待はまったく上がらなかったのだ。
インフレ期待を高めて景気を回復しろ、デフレはまずいぞ、という理論をメジャーにしたのは、昨年ノーベル賞を取ったポール・クルーグマンだ。それをいちはやく日本に紹介したのは、ぼくの人生の数少ない自慢の一つだ。
というわけで、読者諸賢におかれましては、とにかくデフレはよくないもので、日銀がその気になればすぐに解決できるんだということだけでもこの一文から読み取っていただければ幸甚。願わくばそれが、世の議論のバランスを覆す最後の一石となりますように。
訳者あとがきの解説部分には「?」な箇所があるが、ここでは触れない。
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