原口議員、税は財源です。

反緊縮偽MMTカルトにはまってしまった原口一博議員が、MMTの「自国通貨を発行する政府は財源を自ら生み出せる故に、近代の国家においては税はもう財源確保の手段ではない」と力説している。

しかし、これは正しくない。

①税が物納

昔の租庸調のように、国は民間に税を現物(物資や労役)で納めさせて、その現物を公共サービスに充てる。徴税しなければ公共サービスを提供できないので「税は財源」になる。

②税が金納(民間の通貨を徴収)

民間部門で民間銀行が発行する通貨(private money)が利用されているとする。国は現物の代わりに通貨を納めさせて、その通貨で民間から市場価格で物資や労働力を購入する。物納と同じで「税は財源」である。

ただし、民間銀行発行の通貨は裏付け資産が不良化して額面通りの価値が失われている可能性があるので、中央銀行が民間銀行が保有する適格資産を裏付けとして通貨を発行し、その中銀通貨を銀行間決済に用いることで、額面通りの取引を保証する。国も民銀通貨を直接は受け取らず、中銀通貨を受け払いに用いる。民間人が1円を納税する場合には、民間人の銀行預金口座の残高が-1円、中央銀行にある政府預金口座の残高が+1円される。

画像1

上図の✚の左右は資産と負債、上下は増加と減少を表す。

③国が通貨を発行

民間から通貨を徴収する代わりに、国が通貨(sovereign money)を発行して民間から市場価格で物資や労働力を購入する。軍が軍用手票(軍票)を発行して物資調達するようなものである。

この方式では物資調達に先立つ徴税は不要なので、原口議員が言うように税は財源ではないが、その代わりに『昭和財政史』(戦前編)第4巻「臨時軍事費」にあるように、通貨価値維持策を取る必要が生じる。

一片の紙にすぎない軍票の価値を維持してゆくのは、容易なことではなかった。一方では、物資の取引売買に軍票建を強制し、軍票売りでなければ営業を許可しない方針など、軍票使用の強制を強化するとともに、裏付としての物資をなんとか算段して行かなければならなかった。
以上のように各種各様の軍票価値維持策が強力に取られたが、しかも結局においてその最大の支柱となったのは物資による裏付であった。・・・・・・軍票の上に「此票一到即正面所開日本通貨」といくら記されていても、それで物が買えなければ一片の紙にすぎないからである。

その一つが徴税で、物資の裏付けを欠く通貨を市中から回収して通貨価値の低下(高インフレ)を防ぐ。

現行制度は②

論理的には②と③のどちらの制度も可能だが、現在の世界標準は②で③ではない。日本の財務省の国庫制度の解説にもあるように、税金は国の財源になっている。

国は、外交、国防、警察などのほか、社会資本の整備、教育、社会保障などの国民生活に必要不可欠な公共サービス等を提供するため、「税」という形で国民から調達しています。
国は、そのための財源として税金や国債等により民間部門から資金を調達して支出を行うといった財政活動を行っており、その所有する現金である国庫金を一元的に管理して効率的な運用を行っています。

③ではなく②が採用された主な理由は、

◆民間銀行を中心に発達した金融システムを利用する方が効率的なため
◆③では国が適切な通貨量の管理ができず、過剰な通貨発行(放漫財政)→悪性インフレになる危険性が極めて大きいことが歴史の教訓として得られているため

である。

税が国の支出の財源であることは、徴税前の支出や税収以上の支出が不可能であることを意味しない。将来の税収からの元利払いへの信用に基づく借入が可能だからである。財政赤字が過大だと市場が判断すれば、予想インフレ率上昇を織り込んで借入金利も上昇し、国に借入抑制の圧力がかかるので、放漫財政への牽制になる。これも現行制度が③に比べて優れた点である。

現行制度では、国債金利の低さは公債依存度の上げ余地の大きさを意味するので、現時点では財政赤字の縮小を急ぐ必要はない。原口議員は「税は財源」では積極財政を正当化できないと考えているのだろうがそうではない。標準医療を理解していないから偽医学に引っ掛かるように、現行制度への理解が足りないからカルト経済学に引っ掛かるのである(MMTは新左翼系)。

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