ステファニー・ケルトンのミスリード

MMTの教祖の一人のステファニー・ケルトンが信用できない人物であることを示すツイートを繰り返している。

インタビュアーの「世界金融危機においてFedが支出したマネーはtax moneyだったのか(税金が財源だったのか)?」との質問にバーナンキが「コンピュータを操作して金融機関の口座の残高を増やした」と答えている。

ケルトンはこれを、政府は財源調達せずに何兆ドルでも支出が可能であるかのように印象操作しているが、現行制度では中央銀行の支出と政府の支出は全く別物である。

バーナンキはこのインタビューの別の箇所で「Fedは金融機関に有担保で貸せるが、資本注入はできない」とも語っている(AIGを救済できたのはgood collateralがあったため)。中央銀行の資金供給とは、金融資産を買い取るか担保に取って貸すこと、つまりは既存の金融資産をより流動性の高い安全資産(central bank money)と交換することなので、見合いの資産がない資本注入には使えない。Troubled Asset Relief Programを主導したのは財務省であり、そのための財源はFedが財務省の口座(TGA)にコンピュータ操作で入金したものではなく、民間から調達されたものである。

中央銀行は「政府の銀行」だが、その意味は政府の出納事務を執り行うことであり、政府に資金供給(信用供与)はしないことになっている。従って、政府が支出するためには徴税か借入(国債発行→市中消化)によって民間から事前に財源調達していなければならない。ケルトンの「政府が中央銀行に指示すれば何兆ドルでも即座に財政支出が可能」との主張は現行制度においては完全な出鱈目である。

これを出鱈目ではなく真実にするためには、現行の通貨システムを全く別の論理構成に基づいて根本的に作り変える「革命」が必要になる。MMTはマルクス主義→新左翼→Progressiveの系譜の左派系思想なので、革命のためには噓八百でもOKと考えているのだろう(噓も方便/目的は手段を正当化する)。ケルトンたちは真摯な学者ではなく活動家である。

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