日本経済はバンザイ突撃中

野田前首相が衆議院を解散した2012年11月を景気の谷とする現在の景気拡大期の特徴は、労働市場の改善が進んでいることである。(グラフの赤マーカーは2013年)

完全失業率は2%台前半にまで低下し、

就業者数は史上最高となっている。

しかし、実質GDPの増加ペースは加速していない。

そのため、就業者1人当たりの実質GDPはほぼゼロ成長である。2002-07年は年率+1.4%だったので大減速である。

1990年代以降に就業者1人当たり実質GDPが停滞した時期には、

1991→94年:バブル崩壊
1996→99年:金融危機
2007→11年:リーマンショック+東日本大震災

と明確な原因がある。2013年以降は労働市場が大幅に改善する景気拡大期なのだが、就業者1人当たり実質GDPの伸び率は大不況期と同じという奇妙な事態が生じていることになる。

その理由には、就業者の増加が低生産性の人的サービス業に集中していることと、

中高年に偏っていることが挙げられる。

経済力を戦力にたとえると、高性能の新兵器を開発して投入する代わりに、女と老人を駆り出して肉弾攻撃を仕掛けているようなものである。一時的に優勢になるものの、質の向上を伴わないため、兵力が尽きた時点で一気に瓦解する持続不能な戦法である。

人口減少社会において国民の生活水準を維持・向上させるためには、技術進歩による生産性の向上が必要なのだが、第二次安倍政権下の戦後最長の景気拡大期に起こったのは、その正反対の方向への構造転換だった。

日本経済は再興に向かっているのではなく、瓦解に向けてバンザイ突撃中なのである。

参考

縦軸は対数目盛率

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