名目と実質による日米GDP比較

一つ前の記事に続いて、名目と実質では日本経済のパフォーマンスが全く違って見えることを日米比較で示す。日本のGDPは2011年基準の簡易遡及(1980~1994年)と2015年基準(1994~2020年)を接続している。

プラザ合意の1985年を基準にすると、アメリカの名目GDPは2019年には約5倍になったが、日本は1990年代半ばから1.5倍強での長期停滞に陥っているために、グラフが「鰐の口」になっている。

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しかし、人口と物価を調整した1人当たり実質GDPの推移は全く異なる。

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日米経済がITバブル崩壊から立ち直って長い景気拡大期に入った2002年からコロナ大不況前年の2019年までの17年間の年平均成長率は日本が+0.9%、アメリカが+1.3%と大差がない。世界金融危機が一段落した2010年から2019年までの9年間でも日本+1.1%、アメリカ+1.6%である。アメリカには劣るものの、名目GDPの印象から受けるほど日本経済全体のパフォーマンスは悪くない。

名目と実質の大きな違いは、日本経済に異常に強力な「値下げ力」が働いていることを示唆しているが、特に注目されるのが1990年代末からサービス価格の上昇が止まったことである。

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サービスは財よりも人手による生産が多い(機械化が難しい)→生産性上昇率が相対的に低い→相対価格が上昇する一般的傾向がある。

ところが、日本では2003年以降、サービスの相対価格の上昇が止まり、2014年からはむしろ低下傾向にある。

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サービスと財の価格の推移は、値下げ力の発生源が「大幅なコストダウンを可能にする技術革新」ではなく、賃金抑圧(→労働のブラック化)であることを示唆している。

その目的と「改革」の成果は一目瞭然。

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(1980~1993年度は2000年基準、1994~2019年度は2015年基準)

日本は資本主義ではない。
資本主義の企業は、株主に最大の利益(配当)をもたらすことを以て、その目的とする。
コストを最小にするのが目的である。

賃金最小化を唱えた小室の弟子(⇩)。自称「広義のリベラリスト」。

日本のさまさまな産業が外資系によってのっとられていくことも、過渡的には必要だとさえ思っています。不合理な雇用環境、性別役割分業、さまざまな問題を抱えた家族制度、そうしたものが解体、再組織されるためには、どうしても外国資本が入ってくる必要があります。
僕は試行錯誤と淘汰のために、日本がいったんは奈落の底に突っ込んでいくべきだろうとさえ、思っています。

リベラルの夢は「外患誘致」と庶民の淘汰。

企業には,株主資本のコストは投資家の期待するリターン(=配当とキャピタルゲイン)ということが再認識されよう。
会計ビッグバンにより,日本企業が資本効率重視の経営に転換し,本格的なリストラクチャリングを求められることを指摘してきた。

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