「岸田政策」の問題点

二点取り上げる。

一点目だが、企業に関しては将来不安というよりも「国内市場の量的拡大が見込めないという確信」とした方が適当と思われる。この確信は人口減少という事実に基づいているので、政策によって変える(→将来不安を払拭する)ことは難しい。

一言でいうと、将来不安だ。日本においては、企業収益が増加しているにもかかわらず、その果実が成長分野への投資や賃金引き上げに十分に回らず、また、家計においても消費が低迷してきた。その根本には将来不安がある。
企業が将来の市場の不透明感から投資や賃上げを躊躇し、個人は将来不安から消費を控えてしまう。それが日本経済の長期低迷の原因だと思う。

二点目だが、これが「日本経済の長期低迷の原因」の一つであることに気付いていないらしい。

加えて、岸田政権は今春、資産所得倍増を打ち出した。
所得には、大きく労働所得と資産所得がある。先ほど申し上げたとおり、労働所得を押し上げていくことはもちろんだが、資産所得も併せて増やすことが必要だ。

日本は

  • 人口減少のために潜在成長率が低い

  • 資本蓄積が進んでいる

ために、資本効率が低いのが自然である。ここで、資本に対するリターンを引き上げようとすれば、

  • 労働所得を減らして資本所得に回す

  • 国内投資をリターンが十分に大きいものだけに絞り込む

  • 投資を海外にシフトする

など、過去20年間の「企業収益が増加しているにもかかわらず、その果実が成長分野への投資や賃金引き上げに十分に回らず」の構造を更に強化することになる。

1990年代から一部で指摘されてきたが、潜在成長率と資本効率が低下した日本がグローバル資本主義に走れば、塩をかけられたナメクジが浸透圧で脱水して縮んでしまうような事態に陥ってしまう。

このような自滅コースを避けるためにはグローバル資本主義から国民社会主義(的なもの)への転換、宮崎義一の言葉を借りれば「トランスナショナルな枠組み」から「国民経済の枠組み」への再転換が必要になるが、現時点では現実的とは思えない。

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