税収を増やせば経済成長する?~積極財政派が隠蔽する国民貧困化の黒幕

この動画の54:12~のように、各国の名目GDPと名目政府支出の伸び率に強い相関関係があることを根拠にして「政府支出の抑制が日本経済停滞の低い主因」「政府支出を拡大すれば長期停滞から脱却できる」と主張する素人集団がある(いわゆる積極財政派)。

(左下の赤点が日本)

しかし、名目のGDPと税収にも同程度の相関関係があるので、「税収を増やせば経済成長率を高められる」とも主張できてしまう。

政府支出はGDPの構成項目の一つなので、政府支出→GDPの方向性があることは確かだが、それよりもGDP→税収→政府支出の方向性が強いことは、財政運営のやり方からわかることである。

日本は防衛費をGNPやGDPの1%以内に抑えてきたが、方向はGDP→防衛費であり、「防衛費を実質で倍増すれば実質GDPも倍増する」わけではないことは自明である。

政府支出の合計もGDPと税収を基準に決められているので、相関係数が高くなって当然である。

長期的には、経済が拡大するから政府支出を増やせるのであって、政府支出を増やすから経済が拡大するわけではないことは、日本経済の推移からもわかる。

日本経済は1973年の第一次石油危機と1991年のバブル経済崩壊を境に、実質成長率を低下させているが、どちらも政府支出(公的需要)の抑制ではなく経済構造の変化が根本原因である。実質成長率低下の直後には政府支出は増やされたものの、成長率を以前の水準に戻すことはできなかった。

小泉改革~リーマンショックにかけて、政府支出は削減されたが戦後二番目に長い景気拡大期である。

積極財政派の根本的誤りは、経済成長の原動力が民間部門ではなく政府部門だと決めつけていることにある。実際には、高度成長を牽引したのが設備投資と輸出だったように、成長のメインエンジンは民間部門であり、政府部門はその補助役であるのが一般的である。「実質政府支出を倍増すれば実質GDPも倍増する」ような簡単なものであれば、どこの国も経済運営に苦労しない。

家計消費の低迷の原因についても、積極財政派は消費税率引き上げだと決めつけることで、主因の賃金・俸給の抑制(⇔配当の激増)の隠蔽に貢献している。

1999年度と2017年度を比較すると、賃金・俸給は-0.5兆円(-0.2%)だが、法人企業所得(法人企業の分配所得、海外直接投資に関する再投資収益支払前)は+53兆円(2.1倍)、支払配当は+26兆円(6.0倍)、消費税は+9兆円(1.7倍)である。

経済統計を確認すれば、企業が株主利益を最大化するために人件費を抑制するようになったこと、つまりは分配構造の変化が家計窮乏化の主因であることは明らかなのだが、積極財政派にとっては不都合な真実のようである。

リフレ派が日本銀行、積極財政派(最近ではMMTer)が財務省を悪玉だと喧伝することで、真の黒幕の株主(グローバル投資家)は安泰でいられるわけである。MMTerはグローバル投資家(≒富裕層)の手先である可能性も疑っておくべきだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?