現代のリベラルの非寛容

これについては何度か取り上げているので、この記事では要点を再掲する。

現代の欧米社会では驚くべきことが起きている。新世代の進歩主義者が、信教国家時代の忠誠の誓いや(神への)冒涜禁止法の現代版ともいうべき、類似したやり方を復活させているのだ。そして、この現代の動きを指揮するのは、アングロサクソン的リベラリズムの中枢であり、大抵の場合はリベラルを自称する人たちだ。
Yet something extraordinary is happening in the West: a new generation of progressives is reviving methods that uncannily resemble those of the confessional state, with modern versions of loyalty oaths and blasphemy laws. And this effort is being spearheaded in the heartland of Anglo-Saxon liberalism—often by people who call themselves liberals. Here is how the old tactics are being revived.

その理由は、アングロサクソン的リベラリズムがファシズムとコミュニズムに並ぶ「キリスト教の代用宗教とも言うべき全体主義的イデオロギー」だからである。大まかには、ヨーロッパの東部がコミュニズム、中部がファシズム、西部がリベラリズムになる。この分布はおそらく、家族構造と関係している(←エマニュエル・トッド)。

神だけでなく悪魔もまた実在し、人間世界に悪い影響を与えつづけている。キリスト教に特に顕著なこの信念はデモノロジーと呼ばれる。
十字軍、魔女狩り、中南米の原住民の虐殺といったキリスト教史のなかの血なまぐさい出来事は、いずれもデモノロジーをもとにして惹き起こされた。西欧の歴史は、神や悪魔の名の下に無実の人々を数多く殺戮してきた歴史でもある。
20世紀にキリスト教の力が弱まると、ヨーロッパにはその代用宗教とも言うべき全体主義的イデオロギーが広まった。ファシズムとコミュニズムである。両者がそれぞれユダヤ人とブルジョワジーを悪魔のように敵視していたことに思いを馳せると、第2章で詳述するように、両者はじつはヨーロッパに固有のデモノロジーの新種であったと考えざるをえない。だが、この点は意外と知られていない。竹山道雄がすでに指摘しているが、ナチズムにとってユダヤ人は人間の皮を着た悪魔の手先だった。したがってユダヤ人を滅ぼすことは、白をしてますます白たらしめることであり、ヒューマニズムに反するどころか、むしろヒューマニズムに仕えることと考えられたのである。

対抗勢力だったファシズムとコミュニズムが消滅したことでアングロサクソン的リベラリズムは「絶対的正しさ」を獲得し、それが「ヒューマニズムに仕える」ための攻撃にお墨付きを与えている。「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」に通じる現象である。

フェミニズムの攻撃性が強まっているのも同じこと。「今のフェミニズムは本当のフェミニズムから逸脱した紛い物」なのではなく、本当のフェミニズムが「権力」を獲得したことで、内在していた攻撃性がむき出しになってきただけである。

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