日本がデジタル大国ではなく非正規大国になった経路
これ👇は日本の経済大国・技術大国からの転落の重大な要因である。
ちょうどそのころ、労働者派遣法の改正などもあり、本当はコンピューターに置き換わるはずの仕事が、非正規雇用の人たちに任されたのです。契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど非正規雇用が増えました。短期的に見るとそちらの方がコストが安かったのかもしれません。
高スキルと低スキルに分化した他国とは少し異なり、日本では正規、非正規に二極化したとも言えます。
データで確認する。
日本にとって不運だったのは、情報通信革命の始まりが企業のリストラクチュアリング本格化(雇用・設備・債務の「三つの過剰」の解消)の時期と重なってしまったことである(その前段階にはバブル崩壊→超円高→金融危機)。
これ👇は1999年度の『経済白書』からだが、当時の企業は「生産性の向上を通じて経済の活性化に結び付く」前向きな投資を考える余裕はなく、ひたすら「三つの過剰」の解消と、人件費削減・雇用の柔軟化に向かっていた。
既にみたように設備過剰感は雇用過剰感と密接に関係している。これは、過剰設備の維持費のかなりの部分がそこで働いている人々の人件費であり、長期雇用慣行のもとでこれが固定費と企業に認識されていることを示唆している。
こうした中で、企業は規模より収益性重視へと経営の重点を急速に移しており、これがリストラ圧力の高まりの背景になっている。
このような動きは市場が統一されて競争圧力が高まった欧州でもみられるが、我が国での最近のリストラの特徴として、守りの側面が強いことが挙げられる。
本来のリストラは生産性の向上を通じて経済の活性化に結び付くべきものであるが、企業の経営資源の中で過剰なものを整理するという側面が重視され、不足しているものを補強する側面が弱い。これは不況下の需要減退のためでもあるが、第3章で議論するように、企業がリスクに対して後ろ向きになっているためでもある。すなわち、将来の需要や発展可能性について控えめに評価し、これに必要な経営資源以外は整理をしようとの態度が強く、このことが雇用滅少などを通じて景気の足どりを重くしている。
将来の需要についての不確実性が増加した状況の下で長期雇用を維持し続けると、将来の収入が不確実な反面、賃金や年金基金に伴う支出が長期に拘束されることとなる。このため、雇用の構成を正規の従業員からより柔軟に調整可能なパートなどヘシフトさせている。
これにより、日本企業はDXによる生産性向上ではなく、女と高齢者の労働力化と非正規雇用の拡大(低賃金労働者による人海戦術/人件費の変動費化)で収益性を高める方向へと事業を再構築した。日本企業はデジタル革命に失敗したのではなく、必要としなかったのである。
Whereas entrepreneurs in Europe were very eager to develop new technologies that increased labour productivity via the capital-labour ratio, Chinese businesses barely had any incentive to do so.
China didn’t “miss” the industrial revolution – it didn’t need it.
このリストラクチャリングが利益増大の面では大成功だったことは2002~07年と2013~18年の景気拡大期の業績が証明しているが、その成功は企業の低賃金・非正規雇用依存を一層強めることになった(経路依存性)。
約20年前の「IT化より非正規化」「産業革命ではなく勤勉革命」の選択の行き着く先は歴史が教えてくれる。
インドなどでは、人件費が安く、資本の価格が高い状況でした。そのため、機械化した工場に投資するよりも、たくさん人を集めて労働集約的な人海戦術でイギリスの繊維産業に対抗していたのです。
しかし、技術はどんどん進歩します。機械化された工場で生産する方が、たくさんの安価な労働力を集めて生産するよりも低価格で良いものができるようになってしまいました。こうしてインドの繊維産業は、イギリスの機械化された繊維産業の前に敗れてしまったのです。
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