最低賃金引き上げだけでは不十分

反緊縮派に憎まれているらしいアトキンソンだが、労働生産性向上が不可欠であることと、その促進には賃金上昇が必要だという指摘は正しい。

しかし、賃上げ→労働生産性向上→賃上げ→・・・の循環を定着させるためには最低賃金引き上げだけでは不十分で、イールドカーブに例えると、翌日物金利の引き上げが少なくとも中期ゾーンにまでは波及する必要がある。構造改革によって、超長期は上がるが中長期ゾーンには恒常的な下げ圧力がかかるようになっているので、その圧力を緩和しなければ、最低賃金引き上げは経済の好循環の起爆剤にはならないと予測される。

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日本企業の性格はこの10年間で本当に変わったと思います。・・・・・・もっとも端的にいえば、経営者マインドにおける経営目標の優先順位の変化です。15年前だったら、株価の維持よりも従業員の待遇をよくすることが、ずっと重要に思われていました。今はその逆なのです。
日本の企業経営に活力が失われた理由も、冷戦終了後のドイツの企業から輝きが消えていった理由も、国際的資本移動自由化の下で株主優遇を競い合うというという意味での「底辺への競争」に呑み込まれ、結果として株主以外のステークホルダー、とりわけ従業員たちとの合意を重視しなくなったことに関係があるだろうと筆者は考えている。

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