転向リフレ派の理解不足

財政拡大は不要のはずのリフレ派が転向して大規模財政出動を主張しているが、この講演を聞くと現代の貨幣制度の構造と日本経済について理解していないことがわかる。

「企業と政府が投資を拡大することで生じる資金不足は日本銀行がマネタイズする」と何度も言っているが、市中で用いられるマネーを作るのは民間銀行の役割であって中央銀行ではない。銀行券は交換される銀行預金がなければ市中には出現できない。また、中銀預金は銀行間決済に用いられるもので、企業や政府の投資をファイナンスするものではない。現在では国内銀行の貸出約定平均金利は0%台に低下しているので、日銀がマネタイズしなければならない状況ではない。民業圧迫なのでむしろ逆効果である。

民間企業が設備投資に消極的な根本原因も理解していない。設備投資が名目ベースで未だに1991年度のピークを下回っているのは、国内市場は人口減少のために先細りが必至であるにもかかわらず、バブル期を超える利益率の達成を株主と政府に強要されているからである(グラフからは、2000年前後のリストラ期を境に、大企業の行動原理が一変したことが見て取れる)。必然的に、投資は国内ではなく潜在成長率の高い海外に流出する。財政拡大が企業の設備投資を促進することは間違いないが、潜在成長率を大幅に高めることはできないので限界がある。

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財政赤字の制約についてもあれこれ言っているが、適切な指標は利払費の対税収比(あるいは対GDP比)である。

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よく分かっていない人の話を聞いても時間の無駄なので、間違い探しが目的でなければ視聴しないことをお勧めする。

ちなみに、2014年4月に消費税率は5%→8%に引き上げられたが、2013年度→2018年度にかけて国と地方の税収は18兆円も増えている。反緊縮派の「消費税率を引き上げるとかえって税収は減る」との主張に対する反証である。経済は消費税率だけで動いているわけではない。

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