中国の千人計画と日本の6000万人計画

中国の千人計画に協力したとして、学術会議が売国奴の集まりであるかのように非難されていたが、高度人材が「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と言っていたのは安倍前首相である。

安倍首相(当時)は2013年9月25日と2017年9月20日にニューヨーク証券取引所でそれぞれ下のようなスピーチをしていた。

私が、日本を出発する前に、ある野球記録が塗り替えられました。1964年に、王貞治という選手が作ったシーズン55本のホームラン記録が、カリブ海出身のバレンティン選手によって更新されたのです。
ここニューヨークでは、イチロー選手が日米4000本安打という偉大な記録をつくりました。日本で海外の選手が活躍し、米国で日本の選手が活躍する。もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。
世界中から優秀な人材を日本に集める。高度外国人材の受入れに、我が国では、数の上限はありません。さらに、私はその審査を10日以内に行うファストトラックをつくり、最短1年でグリーンカードが取得できる制度をつくりました。
4年前に掲げた、アベノミクスの長い改革リストを、私は一つ一つ確実に実行してきました。そのことを、世界経済を動かすウォール街のど真ん中に、4年ぶりに訪れ、皆さんに御報告できることを大変光栄に思っています。

安倍前首相の言葉を借りれば、こう(⇩)なってもおかしくない。日本の優秀な研究者を日本に引き留めたいのであれば、政府が魅力的な環境を提供すればよい。提供しないということは、海外流出しても構わないという認識であることを意味する。

日本で中国の学者が活躍し、中国で日本の学者が活躍する。もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。

シンガポールが好待遇で高度人材を誘致しても騒がないのに、中国が同じことをすると大騒ぎするのも筋が通らない。

中国の場合は国家安全保障の懸念が無視できないとの意見もあるが、観光立国のために中国人観光客の呼び込みを積極的に行っていたのも前政権の首相と官房長官(現首相)である。「2030年に外国人観光客6000万人」の観光立国に突き進む日本と、科学技術強国を目指して高度人材を集める中国との国家戦略の違いである。

日本政府が高度人材よりも外国人観光客を優先するのは、上に引用した安倍前首相の2017年9月20日のスピーチの後半部を読めば理由がわかる(日本国民の厚生<ウォール街の皆さんの利益)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?