円安でも企業が輸出を増やさない理由

日本経済の最大の問題は企業の国内投資不足だとするD.アトキンソンの説は、輸出動向によっても裏付けられる。

結論を先に言うと、内需が足りていないのは「企業の投資需要が低下しているから」です。
日本企業が緊縮戦略をとっている主因は、日本政府の緊縮財政でもデフレでもありません。となると、緊縮財政は経済低迷の主因でないので、緊縮財政を止めれば経済が本格的に回復する、とはかぎらないのです。

アベノミクスでは「日本銀行の量的緩和→円安→輸出増加」が景気拡大のルートの一つとして期待され、多くのエコノミストもそのように予想した。

画像9

しかし、実質為替レートは変動相場制移行後の最低水準まで円安になったものの、輸出数量はほとんど増えなかった。2002~2008年の輸出数量増加も、米欧向けが増えていないことからは、円安効果というよりもアジア(特に中国)の経済成長によるものだったと判断できる。

画像1

画像2

画像3

画像4

画像6

画像7

画像8

輸出が為替レートに反応しなくなったのは、輸出企業のグローバル展開と関係している。海外生産とグローバルサプライチェーンマネジメントが定着したことで、経営判断は「円安→国内で増産(能力が足りなければ設備投資)→輸出ドライブ」といった単純なものではなくなった。

世界のグローバル経済圏のプレイヤーにとって、日本はもはや魅力的な市場ではなくなった。市場の大きいところに立地したいと考えるグローバル企業にとって、日本は立地的にそれほど有利な場所ではなくなった。

画像9

低金利や円安が国内投資を喚起しないのは、グローバル企業にとって日本が投資先として適地ではなくなったということである。これが「もともとあった問題」だが、構造的なものなので財政政策では解決できない。これに関してはアトキンソンの見方は正しい。

日本政府が行っていた緊縮財政や消費税の引き上げは、経済に対して短期的な悪影響を及ぼしたのは確かですが、もともとあった問題を悪化させているだけの「副因」であって、経済低迷の主因ではないことになります。

日本経済はほとんど詰んでいると言わざるを得ないが、その根本原因は財政赤字ではなく、日本を過疎化させる"Demographic Deficit"(by Hans-Werner Sinn)である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?