日本再興=夕張化

2012年11月の景気の谷から続く現在の景気拡大期の際立った特徴は、就業者数が急増したことと(特に女)、実質GDP÷就業者の伸びが止まったことである。2013年→2019年の6年間では実質GDP+5.5%、就業者+6.3%、就業者1人当たり実質GDP-0.8%となっている。2012年→2017年の5年間は実質GDP+8.8%、就業者+1.5%、就業者1人当たり実質GDP+7.1%だった。

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1990年以降に就業者1人当たり実質GDPの伸びが止まった時期はバブル崩壊、金融危機、リーマンショックの景気後退期だが、安倍政権下では景気が長期拡大しているにもかかわらず伸びていない。このことは、日本経済が技術進歩と労働生産性上昇によって成長する力を失ったことを意味している。これが「日本を取り戻す」と称した安倍政権の成果である。

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就業者増加の多くは技術進歩と労働生産性向上余地が乏しい対人サービス業である。

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安倍政権が力を入れているのが「観光立国」だが、観光関連産業も技術進歩と労働生産性向上余地が乏しい対人サービス業が主体であり、この分野に生産要素を優先的に振り向けることは、経済全体の生産性上昇にはマイナスに働く。

「外国から観光客が殺到するのは日本が素晴らしい憧れの国だから」「日本の素晴らしさに感激した中国人が増えれば中国が親日民主国家に生まれ変わる→戦略的に中国人を呼び込め」「『インバウンド優先は日本経済を脆弱にする』というのは悪質なプロパガンダだ」などと息巻いていた頭のおかしいオッサンもいたが、昨今の状況を見れば、そのような主張こそ悪質なプロパガンダであることがわかるだろう。

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日本が「夕張化」しつつあることの認識が必要である。

その後の夕張は迷走した。観光で生きて行こうと、テーマパーク「石炭の歴史村」や、特産の夕張メロンをアピールする「めろん城」などの「ハコモノ」にすがった。
だが、その戦略は裏目に出た。2006年。夕張市は財政破綻を表明し、翌年には財政再建団体(現在は財政再生団体)に転落した。市民は借金返済のために、日本一の負担を強いられる一方、公共施設は次々に閉鎖され、公共サービスは切り詰められた。市民は次々に夕張をあとにした。

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