報道ステーションCM炎上とカズオ・イシグロの懸念

報道ステーションのCM炎上は、カズオ・イシグロが警鐘を鳴らす「感情優先社会」の好例である。ただし、先日の記事でも指摘したように、感情を優先する「バカ」は「感情を通してコミュニケーションをする創造的な仕事をする人間」が多いリベラルの側に多い。

ブレグジットにしても、トランプ主義の台頭にしても、中には半分ジョークを交えながら、「この世には本当にバカがいるもんだ」と怒る人もいます。しかし、私たちはその先にあるものを考えないといけません。そこで起こっている重要なことに気がつかないといけないのです。
科学以外の世界では何か異常が起きている。これは私たちのような感情を通してコミュニケーションをする創造的な仕事をする人間にも責任の一端があるかもしれませんが、私たちは「大事なのは事実や真実ではなく、何を感じるかだ」という考えを浸透させすぎたようです。
誰もが感じたいことを感じて、それが真実になる、という考えは非常に危険なものです。しかし、今のメディアや情報のやり取りにおけるビジネスモデルは変わってしまい、エビデンスではなく、感情や意見が幅をきかせるようになってしまった。

報道ステーションの30秒CMの台詞は以下の通りで、終わりの「ちょっとニュース見ていい?」に「こいつ報ステみてるな」の字幕が重なる。

なんかリモートに慣れちゃってたらさ~
久々に会社行ったらちょっと変な感じしちゃった

会社の先輩 産休明けて赤ちゃん連れて来てたんだけど もうすっごいかわいくって
どっかの政治家が「ジェンダー平等」とかって今スローガン的に掲げてる時点で 何それ 時代遅れって感じ

化粧水買っちゃったの~すっごいいいやつ
にしてもちょっと消費税高くなったよね
でも国の借金って減ってないよね

あっ9時54分
ちょっとニュース見ていい?

前半からは、この女が勤める会社は

①リモートワークが一般化している
②企業内保育所がある可能性大

と読み取れる。つまりは現代の日本ではかなり「進んだ」会社であり、そのようなジェンダー平等が当たり前の会社に勤める進んだ人々には、今時スローガンに掲げるような政治家は時代遅れに見えてしまう(というメッセージである)。

後半では、自分の買い物をスムーズに国の財政問題に結び付ける知性と政治に関心があることが表現されている。

要するに、このCMは「報道ステーションを見れば価値観がアップデートされた知的なプログレッシブになれる」と、番組がターゲットにするリベラル層に訴えていたわけである。

松本人志も同様の読み取りをしている。

今回の問題に松本は「報道ステーション側は、このCMは、報道ステーションはちょっと先を行ってますよ、先を見えてますよ、報道ステーションを見ている人たちは先を見えてますよというCMをやりながら、CMが先を見えてなかったというブーメラン的な目にあったということですよね」とコメントした。

ところが、これが「論理より情緒」の人には通じない。WebCMなのでターゲットを絞ったつもりだったのだろうが、逆に不特定多数の理解力を欠く人々が怒り狂って殺到した。

全裸で灯油をかぶってキャンプファイヤーするぐらい、炎上必至の内容である。ネットでは爆速で批判の声が広がり、私も以下のようにツイートした。

👇「ジェンダー差別を支持する」の意味ではないことは既に述べた。

画像2

画像2

👇無知で馬鹿の逆に描かれている。

画像4

👇「ジェンダー平等が時代遅れ」なのではなく、時代の先端を行く人々には「言われるまでもない」という内容である。

画像5

👇意味不明。

画像5

👇現代日本が地獄すぎるのなら、ソマリアやアフガニスタンにでも移住すればよい。

画像6

👇自分が意図を読み取れないだけ。

画像7

👇女の役員が少ないことは差別ではない。

画像8

画像9

「妄想」しているのはアルテイシアである。

子どもが好きで美容に関心があり、ジェンダー差別や女性の権利には関心がなく、消費税に文句言わない、こいつ呼ばわりされても笑顔の若い女。
そんな「僕の考えた理想の妄想彼女」みたいなやつを無批判に描くなんて、ジャーナリズムの自殺じゃないか。

あまりにもレベルが低いのでこれ以上は突っ込まないが、これほど理解力がない人物が「作家」をやれていることには呆れるしかない。

東洋経済の記事ではインタビュアーがこのように言っているが、これはまず間違いない。

―感情に重きが置かれるようになった責任の一端はSNSにあるかもしれません。

感情(特に恐怖や怒りなどの負の感情)は論理よりも感染力が圧倒的に強い

SNSはそれを桁違いに増幅させる

感情的に怒り狂う人が量産される

ということである。

繰り返すが、感情的に怒り狂っている人々はリベラルの側に多い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?