「国債の利払いで財政破綻」はあり得る

例の反緊縮漫画家がまたいい加減なことを描いている。

国(中央政府)には資金調達の最終手段として「中央銀行からの直接の信用供与」があるので、債務不履行(デフォルト)という形での「破綻」は避けようと思えば避けられる。

しかし、中央銀行が国債を無制限に買い入れなければ新発国債の利率が上昇して利払費が雪だるま式に膨れ上がる状況では、その流れを止めるために財政を強力に引き締めなければならなくなる。逆に、財政赤字を中央銀行にファイナンスさせるmonetizationを続ければ、インフレは制御不能になって経済活動は大混乱に陥ってしまう。2000年代のジンバブエで起こったのがこれで、中央銀行による財政赤字のファイナンス(準財政活動)→インフレ激化→外貨への逃避→ハイパーインフレーション→自国通貨廃止という形での「破綻」となった。

👇は『日本銀行百年史』からだが、敗戦後の物価暴騰も日銀が財政赤字をファイナンスしたことが一因だった。インフレの鎮静にはドッジ・ラインの超均衡(政府の収支全体を通じての真の黒字予算)を必要とした。

昭和22年度一般会計歳出最終予算額を見ると、終戦処理費が歳出総額の30.0%(補正予算額のみでは補正総額の37.4%)を占め、財政の健全運営に対する重圧となっていた。そのほか、物価安定のための価格調整費が歳出総額の10.8%(同13.3%)を占めていたことも財政の膨張を不可避にさせ、それは表面的には物価の安定に寄与しているかのようにみられるものの、財政赤字の増大を通じてインフレーションを助長し、やがては安定価格帯の維持を困難にするという結果を招いていた。
昭和22年中の銀行券増発額は1257億円に達した(21年末残高比134.6%増)が、この間、本行の政府貸付金は456億円、国債・債券保有高は1111億円増加し、両者で銀行券増発額の124.7%にも相当した。22年中の本行の国債引受額は285億円、政府短期証券のネット引受額は572億円に達し、これに復興金融債券の引受額340億円を加えると実に1199億円に上がったから、上記の国債・債券の保有額のほとんどすべてが、対政府関係の取引によるものであったということができる。

現在の日本経済がそのような状況からは程遠いことは確かだが、「インフレが昂進して利払費が⛄になっても中央銀行が市中から国債を買い上げてしまえば財政は破綻しない」は一般論としては正しくない。

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