人口減少と「安いニッポン」

輸入インフレが実感できるようになったためか、日本経済の問題はデフレよりも賃金が上がらないことだという記事が増えてきたようである。

これについては既に記事にしているが、その根本原因は売上が増えないことにある。

企業は売上が増える見込みがなければ固定費は抑制する。バブル崩壊以降、売上高はボックス圏で推移しているので、足元で利益が出ていても、賃上げに慎重になるのは自然なことである。

売上高=数量×価格だが、数量は国内は人口減少、海外は輸出から現地生産化のために、増加していく予測は立てにくい。価格も人件費抑制が消費者の低価格志向を強めたことで上げにくくなっている。

  • 成長しない→賃上げできない(固定費を増やせない)

  • 売上が増えない→値上げできない

賃金と物価が両すくみの均衡状態が日本経済のNew Normalになってしまっている。これは企業が合理的に行動した結果なので、ここから脱却するためには政府が価格と賃金を引き上げる財政支出を続けることが有効だが、それは政府の基本方針の財政再建に反するだけでなく、民意も支持するとは考えにくいので、実現可能性は極めて低い。

なお、利益が少ないから賃金が上がらないのではないことには注意。

企業利益と賃金の連動が切れた転換点はこれ👇。2003~2007年度には海外経済(特に中国)の成長に牽引されて企業業績は急拡大したが、人件費は抑制が続いた。

賃金が上昇していたなら、理在の景気の牽引役は輸出産業ではなく、個人消費になった可能性が高い。これが冒頭のイフである。そして、賃金抑制で最も影響を受けたのは、大企業の正社員ではなく、急増した非正規社員たちだった。

大企業の行動の変化は👇のグラフに表れている。

最近では、東京の(旧)プランタン銀座がユニクロになっていたことに「安いニッポン」を感じた。


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