中野の矢野財務次官批判(その二)

中野剛志の矢野財務次官批判については先日の記事で取り上げたが、この記事では煽動が悪質さの度合いを増している。

要するに、米国の主要な主流派経済学者たちの「新しい見解」からすれば、「バラマキ合戦」と称された政治家たちの政策論は、実は、正しいのである。

サマーズが「公共投資によるインフラ整備」を推奨しているように、アメリカの主流派経済学者たちは費用対効果、目的合理性を無視した「バラマキ合戦」を正しいとはしていない。

矢野財務次官も「コロナ禍という非常事態なのだから、四の五の言わずにとにかくばら撒け」という目的非合理的な主張に異議を唱えていたのであり、あらゆる財政支出増に反対していたわけではない。

中野は「政府債務/GDP」に関する矢野次官の論理は誤りだとして、飯田泰之のプレジデントオンラインの記事を援用しているが、

ここで言いたいのは、それを「とんでもない間違い」と一蹴する矢野次官の算術計算の方が、「とんでもない間違い」だということだ(https://president.jp/articles/-/51325?page=2)。

一律給付が合理的でないことについては、飯田は矢野次官と一致している。

2021年も残り2月少々となった今、一律給付型の政策を優先する合理的な根拠は見当たらない。
有権者の意識がこれらの広く・浅い給付に注がれたことは、選挙後の政策において同種の政策実施を急がざるを得ない政治状況をつくるだろう。コロナショックで深刻な経営危機にある業種・業態にとって喫緊の支援が劣後することは、コロナ後の回復の足取りを重いものにするだろう。ここに本当の危機がある。

中野は財政出動額を増やすほど政府債務/GDPは低下して財政は健全化するとして、「日本政府が20兆円の国債を発行して、20兆円の追加財政支出(非移転支出)を行ったら、どうなるか」との簡単な計算例を示しているが、この計算にもトリックがある。

当年度のGDPが+20兆円(500→520兆円)になったとしても、翌年度のGDPが520兆円以上になる保証はない。財政支出をどんどん増やしてインフレを加速させれば政府債務/GDPは低下するが、インフレ税で債務を返済しているだけである。大体、国債発行と財政支出を増やせば増やすほど政府債務/GDPが低下するのであれば、どこの国も経済財政運営に苦労しない。

矢野次官の主張に様々な欠陥・問題点があるのは事実だが、中野はそこに乗じて、多くの経済学者が反対するであろう非合理的なバラマキ的財政支出を正当化しようとしている。中野が「憂国の士」に見えて共感する反緊縮派も多いのだろうが、最近の言動は煽動と言った方がよいレベルで、中野が批判している人物と五十歩百歩になっている。

ちょび髭とか生やして、まなじり吊り上げて怒鳴っているような顔には気をつけましょうとかですか(笑)。

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