地方債の日銀担保活用の効果は期待薄

これ(⇩)を日本銀行が地方債を引き受けて地方公共団体の財政支出をファイナンスすることと早とちりした人がいるようだが、内容を読めばわかるように、全く別の話である。

金融機関が保有する地方公共団体向けの証書貸付債権(証書形式の銀行等引き受け地方債)を日本銀行担保として積極的に活用するよう、総務省が金融機関や地公体に対して働き掛けを始めたことが分かった。
地公体向けの証貸債権は、2019年6月の金融政策決定会合で担保要件が大幅に緩和されて以降、担保残高は着実に伸びているものの、日銀に担保として差し入れる際に地公体の承諾が必要になるなど手続きの煩雑さもあり、十分に理解の浸透や活用が進んでいなかった。

地方債の利回りが歴史的低水準で安定していることは、民間金融機関による消化で十分であることを示している。日銀が引き受けなくても地方公共団体の資金調達に支障はない。

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総務省の担当者は「期待できる」としているが、担保として積極的に活用することが地方経済に好影響を及ぼす経路は見当たらない。

総務省自治財政局地方債課の高木健司調査員は、「地方債を担保として積極的に活用し、日銀から資金供給を受けることで、資金の流れが一層円滑化される。金融機関の引き受け余力が向上し、今年度増発が予定されている地方債の安定消化や地域経済の活性化にもつながることが期待できる」と意義を強調している。

地方経済が疲弊しているのはグローバリゼーションによる海外との競争の激化や東京一極集中と人口減少などの構造要因のためで、借入需要があるのに銀行が貸し渋っているからではない。そのため、銀行が日銀からの資金供給を受けやすくなっても、銀行借入増加→設備投資増加→地方産業発展→地方経済活性化にはつながらない。

一部の反緊縮派も「日銀の資金供給はすべてを癒す」と、リフレ派と同じ同じ穴の狢になったようだが、経済構造に起因する問題は構造改革でしか解決できない。カネカネカネと叫び続ける反緊縮派は、自分たちが我田引水の構造改革を進めるレントシーカーを助けていることを自覚したほうがよい。

補足

国債でも話は同じで、中央銀行が資金供給の担保にすることは中央銀行が国の財政支出をファイナンスしていることを意味しない。ファイナンスしているのは発行市場で買った機関投資家や銀行等の金融機関である。

Bloombergの記事に浮かれている人(反知性主義が多い)が現行制度について無知なことは明らかになった。

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