北欧の出生率低下の実相と真因

世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数ランキング2021のトップ3のアイスランド、フィンランド、ノルウェーでは近年出生率が急低下している。2020年の合計出生率(total fertility rate)はフィンランド1.37、ノルウェー1.48(非移民系は1.44)である。

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ノルウェーの2009→2020年のTFRの低下0.5ポイントのうち30歳未満が0.4、30~34歳が0.1で、低下が30代前半にまで及んできたことが注目される。

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各国政府もTFRの急低下には危機感を示しており、昨年にはノルウェー公衆保健研究所(FHI)が報告書を出しているが、問題は、若い世代の出生率の低下が出産時期の先延ばしによるtempo効果によるものなのか、それとも最終的に産む子の数(completed cohort fertility, cohort fertility rate)が減少するquantum効果なのかである。Tempo効果なら時間が経てば急落前の水準に戻るが、quantum効果なら戻りはCFRの水準までになる。

実のところ、ほぼ産み終わった世代では少子化は生じていない。1980年生まれのコーホートでは40歳時点で平均1.85人を産んでいるので、最終的にCFRは約1.9になると予想される。1950年代以降に生まれたコーホートのCFRは2.0~2.1だったので低下はしているが「少子化」というレベルではない。

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問題はその後の世代である。

後のコーホートになるほど30歳までに産む数は減少しているが、30歳以降でのリカバーでCFRはほぼ一定を保っていた。つまり、TFRが2を下回っていたのはtempo効果のためでquantum効果ではなかった。しかし、1975~1980年生まれのコーホートを境にCFRが低下する兆候が見え始めている。

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若い世代が産まなくなってきたことに関してFHIの報告書では様々な要因を検証しているが、注目されるのが価値観・社会規範の変化である。下は報告書掲載のグラフだが、婚姻制度は時代遅れと思う/信心深くない進歩的価値観の女は逆の保守的・伝統的価値観の女に比べて子の数が少ない。

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社会全体では「神を信じない」人の割合が着実に増えて「信じる」と逆転している。このような進歩的観念の強まりが出生率低下と関係している可能性が濃厚である。

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数値化が難しいこともあってこれまでの少子化分析では軽視されてきたが、宗教心と出生率が関係することはイスラエルの例からも明らかである。宗教心とまではいかなくても、価値観・社会規範の変化は無視できない。

フィンランドについては上の記事👆でも取り上げているが、個人主義を教え込まれた若い世代にchildless, childfreeな生き方を肯定する価値観が広まっていることが北欧の出生率低下に寄与している可能性がある。

But now, according to the study, women said that they're not having children because they don't want to lose their freedom. Some of those women said that if they gave birth to a child they'd have to give up travelling, enjoying hobbies and spending time with friends.
“The number of childless individuals is growing rapidly, and the number of women having three or more children is going down. This kind of fall is unheard of in modern times in Finland,” said Anna Rotkirch, a family sociologist at the umbrella organisation Finnish Family Federation.

この記事👆の専門家は、フィンランドのTFRの低下は出産の先延ばしによるものだけではなく、CFRの低下も寄与していると見ている。

All-time low period fertility in Finland: drivers, tempo effects, and cohort implications

All of our forecasting methods suggest that cohort fertility is likely to decline from the 1.85-1.95 level that was reached by the 1940-1970 cohorts, to a level of 1.75 or below among women born in the mid-1980s.

Birth cohort changes in fertility ideals: evidence from repeated cross-sectional surveys in Finland

Our findings indicate that the ideal number of children was lower among more recent compared to earlier birth cohorts. This difference in fertility ideals was driven by larger proportions of those preferring to remain childless among the recent birth cohorts. This suggests that attitudes of Finns towards childbearing have changed and may contribute to recent fertility decline.

FHIの報告書でも言及されているが、このような価値観を持った人々には育児支援策を拡充しても出生率向上には効果が無い。

But Prof Gauthier does note that even Scandinavia has begun to see a fall in its fertility rates, showing that the real key to higher birth rates remains unclear.
"With Scandinavia we thought they had got it right... until about last year when their fertility rate started to decline," she said.

フェミニズムの毒が回ってきたことが北欧諸国の出生率低下の主因ではないかと疑われる。

フェミニズムは死の文化です。フェミニズムのせいで女性は子どもをつくらなくなったわけですから。
子どもが生まれなければ、行き着くところは死しかありません。フェミニズムとは何か。女が男と同じように行動したがることです。ラディカルなフェミニズムが定着したあらゆる国で、女性たちが子どもを作らなくなったのは偶然ではありません。シモーヌ・ド・ボーヴォワールがまさしくそうです。
子どもから解放されないと女性は解放されない
個人的な面では、一番大事なことは働くことです。そしてできれば結婚を拒否すること。
最近になって、子どもを産むことは女性にとって厄介な罠だと思うようになりました。だから母親になるな、と女性に忠告したいのです。

人工妊娠中絶の合法化は女が子供から解放されるため。

付録

この👇ような俗説を信じないように。リベラルには正しい行動(政策)は望ましい結果をもたらすという根拠のない信念があるが、それが根本的な誤りである。

おっさん向けメディアが極めてリベラルな主張をするようになったことには要注意。世界経済フォーラムの"Great Reset"と関係する。

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