『Voice』のクルーグマンインタビュー

『Voice』5月号にポール・クルーグマンへの巻頭インタビュー「世界インフレは本当に去ったのか」が掲載されていたが、変な箇所がある。クルーグマンがこの通り発言したのか、翻訳・編集の問題なのかは不明。

日銀が国債などを購入すれば、現金が金融システムに注入されます。このように日銀が世の中に直接的に供給するお金が好循環すれば、たしかに「良いインフレ」を引き起こせる可能性がある。しかし、銀行にお金が座ったままであれば、マネーサプライにはほとんど何も起こりません。

p.17

市中銀行が日銀から受け取る現金(実際は当座預金=電子化された現金)は又貸しするものではないので、世の中(市中)には出回らない。中央銀行は原則として市中には直接的に現金を供給しない。

ですから日銀がマネタリーベース(現金の通貨と民間金融機関が中央銀行に預けた預金の合計)を10倍以上にしても、名目GDPは二倍強くらいにしかならなかったのです。

p.17

マネタリーベースは10倍以上になっていないし、名目GDPは2倍にもなっていない。どこからこの数字が出てきたのか不明。

内閣府, 日本銀行

日本独自とも言える病気が「慢性デフレ」です。

三十年以上もデフレが続いたのでデフレマインドが定着してしまったのです。

p.20

デフレは30年以上も続いていない。実際はその半分である。

総務省統計局「消費者物価指数」
2020年基準を1998年=100としたもの
2021年4月の急落は携帯電話通信料引き下げによるもの

これ👇はその通りだが、企業が「本来であれば」の行動をしなかったのは、個々の企業にとってはしないことが経済合理的だったからである。事実、企業の利益率は著しく高まっている。

さらに日本特有の病気を指摘すると、とにかくお金を使わないことです。欧米ではお金を手に入れれば貯金よりも投資に回しますが、日本では企業もなかなか賃金を上げず、内部留保を増やすだけでした。本来であれば人材投資を含めて、生産性を上げることを目的とした健全な投資に回すべきだったのです。

p.20
財務省「法人企業統計調査」
全産業(金融保険業を除く)・全規模
2009年度以降は純粋持株会社を除く

日本経済の問題は企業行動にあるということである。

付録

「断じて代理戦争ではない」と叫ぶ日本の国際政治学者はクルーグマンを批判しないと。

ウクライナがロシアとアメリカの代理戦争になりたくないと叫び続け、中立国を維持することができれば戦争は終結に近づきます。経済制裁の影響力は限られています。民主主義国から見れば、世界中がウクライナ側に立っていると錯覚しがちですが、現実ではロシア側に立つ国も多い。立場を表明していなくとも、内心はロシアにシンパシーを感じている国もあります。私たちは決してそのことを忘れてはなりません。

p.23

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