見出し画像

日本の参考にならないフランスとスウェーデンの少子化対策

追記

この記事を堀茂樹にデタラメ呼ばわりされたので、反論記事を書いている。

堀は人口学の素人のはずだが、エマニュエル・トッドの受け売りをしているうちに、自分に十分な専門知識があると思い上がったようである。この記事にはトッドが言っていないことが書いているので、浅薄な知識に基づいてデタラメだと断じたのだろう。自説に都合が悪いフィンランドに関する指摘をスルーしていることにも注目。上野千鶴子と同じ穴の狢である。

本文

出生率引き上げのためにフランスやスウェーデンを見習え的な記事が多いが、フェイクニュースとまでは言えないまでも、限りなくミスリーディングなものが大半である。

フランスの2018年の合計出生率は1.84だが、出生の1/4弱が外国出身の母によるものである。

画像2

画像3

さらに、簡単には真似できない文化・国民性の違いも大きい。フランスは良くも悪くも性や恋愛に緩い/寛容な文化だが、日本はそうではないので、単に制度を真似しても期待した効果は得られない(仏作って魂入れず)。

命とか命を生み出すものは、無秩序、だらしなさ、ルーズさなのです。
もっと社会の秩序を緩くして、子供をつくる。お行儀が悪くなることをよしとしなければなりません。

スウェーデンも、2018年には国内生まれのTFRは1.67に低下している。ノルウェーは1.50である。

画像3

スウェーデンのTFRは変動幅が大きいが、これには社会保障給付で得するタイミングを狙って出産時期を早めたり遅らせたりしていることが関係している。その影響を均すと1.6~1.7程度で、人口置換水準には程遠い。

北欧モデルの弱点は、人間本来の「男女がペアになって分業しながら子育て」を否定して徹底した個人主義化・家族の解体を進めたために、子を持つことは自然ではない、という観念が社会に広まってしまったことにある。

スウェーデンでは17歳の子のうち実の両親と暮らす割合は6割に過ぎない。「子は鎹」を否定すれば、男女間の引力も弱まり、子を持つ意味も失われていく。

画像4

近年になって、北欧諸国でも出生率低下の兆候が出てきたのは、子を持つことを自明とは考えない男女平等・個人主義の第三世代が出産適齢期になってきたことと関係がありそうである。子を産みたいと思う女には育児と賃労働の両立支援は有効でも、子を持つことを自然とは思わない女には無効である。

これだけ子どもや家族への福祉政策が充実しているにもかかわらず、「子どもがほしくない」という人も増えている。
国営放送局Yleの調査によると、2008年から2018年にかけて「子どもが欲しくない」と答えた人の割合は10倍以上に増えた。
The Nordic region already boasts a wealth of family-friendly initiatives, such as flexible working hours, a vast network of affordable daycares and generous parental leave systems.
But when all that is still not enough to encourage people to have more children, immigration can be a lifeline -- or a threat, depending on the point of view.

韓国も似た状況になっている。

The poll also suggested that 25.9 per cent of female respondents said they were okay with not having children, while 39.9 per cent of the male respondents said children were a necessity.
The poll, conducted by the Korea Institute for Health and Social Affairs, suggest a sharp change in the mindsets of South Koreans, especially among women, whose lot in life was to get married and stay at home only a few decades ago.
Higher education and participation in the work force, and a corresponding increase in financial independence, are the main factors for the shift, said Yonhap.

女は男の稼得労働を代われるが、男は女の出産は代われない。また、男は妻を養うために働けるが、女は夫を養うためには働けない。そのため、女が「社会進出」して家庭から退出すれば、社会全体では出産と育児役が不足してしまう。いくら働き方改革や育児支援を行っても、この「穴」を埋めることは原理的に不可能であり、これが先進国の出生率低下の根底にある。このことを無視した少子化対策論議は無意味である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?