「税収は財源で無い」のではない

反緊縮・積極財政派がマントラのように唱える「税金は政府支出の財源ではない」だが、現行制度では事実ではない。

「税は財源ではない」は、徴税は「統合政府」が発行・支出した通貨を事後的に回収する行為という解釈から来ているが、現行制度はそのような論理構造をしていない。

【角田次長】「統合政府」は「政府紙幣」発行と同じ発想だが、政府紙幣はかつて失敗した反省がある。「通貨発行は中央銀行(日銀)が政府から独立して行うべき」というのは歴史の教訓だ。

政府の通貨調達コストがゼロだと支出の歯止めが効かなくなり、インフレを暴走させるリスクが極めて高いことが「歴史の教訓」として得られている。そのため、現行制度では政府は支出のためには通貨を発行しない。日英の財務省の説明からも明らかだが、国は通貨のissuerではなくuserである。

国は、(1)外交、防衛、司法警察のほか、(2)教育や科学の振興、保険・年金等の社会保障、(3)道路整備や治水・治山等の社会資本(公共財)整備などの様々な行政活動を行っています。
また、国は、そのための財源として税金や国債等により民間部門から資金を調達して支出を行うといった財政活動を行っており、その所有する現金である国庫金を一元的に管理して効率的な運用を行っています。
The government is not some entity that has its own money, the government only has money because people pay taxes and we borrow money that's how we fund what we do.

政府には強制的に集金する権能の徴税権があるので信用リスクがゼロの無リスク金利で借り入れできるが、インフレリスクは金利に織り込まれるので、放漫財政に歯止めがかかる仕組みになっている。

歴史的にも、中央銀行は政府の財政部門から分離独立したものではなく、最有力の民間銀行が銀行間決済の中心となることから進化したものである。現行制度では中央銀行は原則として政府に直接的に信用供与(通貨供給)しないので、政府は民間部門から徴税や借入によって財源調達しなければ支出できない。

誤解している人が散見されるが、中央銀行が政府の債務証券を裏付けとして発行した通貨をインターバンク市場に供給することは政府支出のファイナンス(統合政府の通貨発行)ではない。

個人でも安定収入があればローンを組んで住宅を購入できるが、これを「住宅購入に収入は不要」とは言わない。同様に、政府が将来の税収を担保に借り入れて支出に充てることを「税収は財源では無い」と言うのも適切ではない。

政府が個人と異なるのは、半永久的存在なので借入の最終的な返済期限が無いことである。そのため、借入の持続可能性は借入額(国債残高)ではなく利払費によって決まってくる。

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反緊縮派が財務省を論破したいのであれば、まずは現行制度の成り立ちと仕組みを理解することである。高井議員のように空想上の制度に基づいて議論を仕掛けても何の意味もない。

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