大阪都構想とクウェート併合

11月1日に住民投票が迫ったいわゆる大阪都構想(大阪市廃止・特別区設置)だが、1990年のイラクのクウェート侵攻・併合と似ているように思われる。

大阪市→クウェート
大阪府→イラク
都構想→イラクによるクウェート併合
特別区→クウェート県
維新 →サダム・フセイン大統領

個人でも企業でも国家でも同じだが、自立できるだけの経済力と自信・気概があれば、上部機構の傘下から脱して自主独立を目指そうとする。逆に、力が乏しければ、傘下に入って安定を得ようとする。EUから脱退したイギリスやスペインからの独立を目指すカタルーニャが前者、旧共産圏の東欧諸国が後者の例になる。

クウェートは外国の力を借りて独立を回復したが、大阪市は市長が率先して独立を返上しようとしているのは奇異に感じられる。東京都区部の人口は都の約7割を占めるが、大阪市の人口は府の約3割に過ぎないので、政令指定都市から特別区に格下げになれば、自分たちが主役ではなくなってしまうからである。

この動きは、維新をハゲタカファンドが政党になったようなものだと見れば理解しやすい。コストカット、解体、売却がその典型的手法で、投資も「外資を導入して外国人観光客を呼び込む」のような他力本願が主体になる。

ではハゲタカファンドの正体とは何だろう。端的に定義すれば、「他の利害関係者(社員、経営者、株主など)の犠牲の上に、自らの利益を創るファンド」といえるのではないか。
ファンドがハゲタカと呼ばれるのは、これら利害関係者の犠牲の上に自らの利益を創ろうとした時である。例えば、不当な従業員の解雇や、取引相手との契約打ち切りによる利益創出、事業資産の売却による現金化の株主還元などがこれにあたる。

過去四半世紀の構造改革で、日本の政治経済は国民の厚生よりも投資家の利益を優先する金融資本主義・株主資本主義に基づいて動かされるようになっているが、それを自治体経営に導入するための事実上の実験特区が大阪である。

前回の住民投票では大阪市民の約半数が賛成したが、それだけ経済的にも心理的にも貧しくなっているのだろう。

画像1

大阪市北部の4市(吹田・豊中・池田・箕面)を含んだ「大阪市+4」

画像3

東京都区部の人口は東京都全体の約7割を占めるが、大阪市の人口は大阪府全体の約3割にとどまる。

今日の大阪と近畿圏の低迷には、明治の「大阪府」の作られ方が関係しているようにも思える。これについては機会があれば取り上げたいが、一つだけ書いておくと、大阪市の弱点は狭すぎることである(面積は東京都区部の36%、横浜市の52%、名古屋市の69%)。旧帝国大学が市内から消えたのも大阪市だけだが、これは大阪が知識経済化に立ち遅れたことにもつながっていると思われる。

札幌、仙台、東京、名古屋、京都、福岡の旧帝大は現在でも市内(東京は旧東京市内)にある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?