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日本全国が少子化でも明石市の出生が減らなかった理由

明石市の子ども施策に出生を増やす効果があったのかを検証した先日の記事の完成度を上げるために播磨町と稲美町のデータを追加した(お断り:論旨は同じ)。

日本全国の出生は減少傾向が強まっているが、明石市は年間2700人前後をキープしている。減って然るべきものが減っていないことは、明石市の出生が(その分)増えていることを意味している。

厚生労働省
明石市

2015→2020年の方向の違いに注目。

厚生労働省,兵庫県
東播磨地域は明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町

明石市の出生率アップが国レベルでの少子化対策のヒントになるのかを、隣接する市町を合わせた広域(明石市、加古川市、稲美町、播磨町、神戸市の3市2町)の出生の推移から推定する。位置関係を知らない人は地図で確認してもらいたい。

3市2町を東西二つの地域に分けて出生数の推移を比べる(西部はほぼ播磨国、東部は摂津国に含まれる)。

西部:加古川市、播磨町、稲美町、明石市、神戸市西区、垂水区
東部:西区と垂水区を除く神戸市

明石市,加古川市,播磨町,稲美町,神戸市より作成
厚生労働省,明石市,加古川市,播磨町,稲美町,神戸市より作成

2006~2012年平均と2021年を比較すると、西部は-21.6%、東部は-21.9%とほぼ同じペースで減少していることから、明石市を含む西部全体では出生増は生じていないと推定できる。これと、西部の中では明石市の+0.8%に対して明石市を除く2区1市2町は-30.3%と減少率が大きいことからは、明石市の出生増は周辺地域から出産意欲のある人を集めた結果と推定できる。子育て支援目当ての転入者に「市内や周辺の出身者が多い」ことは、泉市長が2019年の著書で認めている。

今、明石市に実際来ている層は、まさに二人目の壁で、30代共働き、子どもが一人いて賃貸暮らし、もう一人欲しいが経済的に大変だから、明石市だと助かる、という層です。加えて、市内や周辺の出身者が多いです。近くに親がいて子育ての手が借りられるんです。つまり、今の転入増加には、親族間の助け合いが可能という要因がかなり大きいと聞いています。

子どものまちのつくり方 明石市の挑戦』p.192

従って、明石市の子ども施策を全国の市町村が真似ても、出生を奪い合うゼロサムゲームになるだけで、国全体での出生増(プラスサム)にはつながらないと推測される。なお、明石市の出生数が西部全体と同率で減少していたとすると、2021年は実績よりも約600人少なかった計算になる。

泉市長や支持者は、社会資本整備から子育て支援への予算シフトを「住民がいなければ社会資本は不要→社会資本整備よりも将来の住民を増やす少子化対策を優先するのは当然」という論理で正当化するが、子育て支援は出生を増やす少子化対策にはならないので、その論理は成り立たない。予算シフトをしても将来の人口減少の程度は変わらず、社会資本が貧弱になっているだけである。

無料化政策や「強烈な個性とポピュリスト的言動で人心を掌握」など、ベネズエラの故チャベス大統領に似たところがある。

チャベス氏は貧困層向けの無料の医療サービスや教育、住宅政策などを推し進めた、貧困層の英雄です。強烈な個性とポピュリスト的言動で人心を掌握したチャベス氏と違い、マドゥロ氏にはカリスマ性がありません。


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