反差別運動とキリスト教

西洋で激化しているBLMなどの反差別運動の本質を示す事例を二つ。

一つ目は、アメリカでコロナウィルスでの黒人の死亡率が高いことに、

タンパク質分解酵素のTMPRSS2の人種間の差異が関係している可能性を示した研究。

これがracismだとして批判されている。人種は生物学的な根拠が無いsocial constructとされているからである。

もちろん、そのような批判に対する批判もある。一例がこちら(⇩)。

二つ目が、エディンバラ大学が"Equality, Diversity and Inclusion"の一環として、David Hume Towerを40 George Squareに改称するというもの。地元出身の大哲学者がcancel cultureに業績を否定されてしまった。

It said its work had been "energised" since the death in the US of George Floyd and campaigning by the Black Lives Matter movement.

大学側は否定しているが、George Floydを連想させる意図が隠されていると疑わても仕方がない。ちなみに、ヒュームは"Reason is, and ought only to be the slave of the passions"が有名である。

But we live in the age of the woke and must look at everything through the lenses of oppression and power. The tower could not just be a celebration of our university’s most famous alumnus, but had to be a statement of white supremacy and a tool of racial oppression.

フランスでもヴォルテールが奴隷貿易に関与したことで狙われている。

これらは現代のリベラリズムが「アップデートされたキリスト教」だとすれば理解しやすい。

「人種間の平等」がリベラルの”宗教“であるという考えを、私は直接的にはハーバード・ロースクールの憲法の授業で、ノア・フェルドマン教授に習った。
「そう、我々はいまだ消えぬ『原罪』を抱えている。道半ばに倒れた『キリスト』の意志を継いで『白人と黒人の平等』という教義を世に広めようと努力し続けている。信仰にも似た熱心さと従順さで。この『人種間の平等』が我々リベラルの心の拠り所だ。この教えをリベラルの『信仰』としないで、他の何が信仰の名に値するだろう」
この教義は後に「すべての人間の平等」へと拡大した。フェミニストはそこに「男女の平等」を入れ込み、LGBTは「セクシャリティの平等」を含めることを主張したからだ。

この絵(⇩)もキリスト教発想との関連を示す証拠の一つ。

一つ目の遺伝的要因の否定は、キリスト教が地動説や進化論を攻撃したことの現代版になる。

リベラリズムの信者を突き動かしているのは「差別という原罪とその贖罪」の意識で、それが「異教や異端を地上から消し去る」という十字軍的行動として表れる。

十字軍の本質は「贖罪」であり、その目的地は聖地に限定されず(聖地十字軍と非聖地十字軍の同等性)、それは連続性を持つ運動であった。贖罪、より正確に言うとローマ・カトリック教皇の認める贖罪である十字軍は、根本的に宗教・信仰とは不可分のものであった。
ここにあるのは共存の思想ではない。異教徒による「汚染」の「浄化」という排斥の思想である。「聖地」エルサレムの聖性を貫くために、汚染された異教徒を「浄化」しなければならないという想念が、ここに見出される。これが「平和」を求める参加者たちの琴線に触れたのは確かだろう。

この想念は左派/リベラルに受け継がれている。リベラルが求める「差別解消」とは、自由で平和な世界を実現するために、教義の"Equality, Diversity and Inclusion"に反すると彼らが勝手に認定するものを地上から消し去ることである。従って、反差別運動は必然的に暴力と流血を伴うことになる。

左派は存在する限りずっと誰もが仲良くて、協力しあい、自由で平和に生きていける社会を追求してきたのだ。
二〇世紀に入り、人間は完全であるという夢は、スターリンのソ連、文化大革命下の中国、ポル・ポト政権下のカンボジアで大変な悪夢と化した。そしてこの悪夢から目覚めた左派は大混乱に陥ったのである。

これら(⇧)の革命を、今度は西側諸国で起こそうというのが反差別運動である。アップデートされた新左翼運動と考えればよい。

We didn’t find that Garza and Tometi have referred to themselves as Marxists. But the book publisher Penguin Random House has said Garza, an author, "describes herself as a queer social justice activist and Marxist."

おそらく、大半の日本人は反差別を掲げるリベラルの暴力性・危険性を認識していないものと思われる。朝日新聞、Huffpost、Buzzfeedなどが「十字軍」に日本を占領させるために必死で活動していることには要警戒である。

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